古谷 賢一
ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

 工場で改善活動を行っていると、「自分たちの工場ほど改善の努力をしている工場は他にはない」と思っているケースを散見する。これに対し、「いやいや、まだまだ努力が足りませんよ」などとは言わないが、もう一度よく考えてほしい。

 実際には、競合他社も同じように、もしくはそれ以上に日々改善に努力している──。

 この事実を忘れてはいけない。工場で日々行われる大小の改善活動により、生産性や品質の向上が図られ、市場での競争力が強くなる。これは事実だろう。だが、これはあくまでも「過去の自社工場と比較して」である。例えば、今の自社工場で血のにじむような努力をした結果、製造コストを10%削減することに成功したとする。しかし、同じ時期に競合他社が製造コストの15%の削減に成功していれば、市場での競争では負けることになるわけだ。

 顧客と向き合う仕事を担う営業部門は、競合他社が顧客に提示する価格や取引条件を想定し、それらに打ち勝つ価格や取引条件をいかに提案するかが勝負だ。企画部門やマーケティング部門、開発部門も同様に、競合他社が新製品や新サービスにおいて、どのような仕様やセールスポイントを打ち出してくるかを想定し、それらに打ち勝つ仕様やサービスの投入を考える。営業部門も企画部門もマーケティング部門も開発部門も、市場の中の「競争相手」を常に意識したアウトプット(成果)を生み出していかなければならない。

 ところが、工場は市場や顧客と接する機会が比較的少ないため、競争相手の工場の姿を思い描くことが難しい。そのため、「我が社」の中の結果だけを見て満足してしまいがちだ。工場はイメージしにくい競争相手を心の中に常に置いておくように意識すべきである。

強い工場づくりのポイント

 強い工場は、社外にアンテナを張りながら、「我が社(我が工場)」が業界でどの位置にいるのかを常に考えている。加えて、競合他社の立場で我が社(我が工場)を分析・評価している。こうすれば、以下のように見方が全く変わってくる。

  • [1]優位だから安泰 ⇔ 競合他社の優位性をいかに崩すかに尽力
  • [2]劣位な点の克服を努力 ⇔ 競合が劣位でもすぐ追い越されるので優位性をもっと伸ばす
  • [3]レベルは競合と五分五分だから手を打つ喫緊性はない ⇔ いかに競合を負かすかを考える
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 「世界のホームラン王」の称号を持つ元プロ野球選手の王貞治氏の名言がある。「努力は必ず報われる。報われない努力があるとすれば、それはまだ努力とは言えない」と。この言葉は、フィギュアスケート選手の浅田真央氏が座右の銘にしていると聞いたことがある。この言葉は、勝負は結果で決まる。勝負とは、他社と比べたときに優位に立てるかどうかで決まるのであり、優位に立てなければ努力をどれだけしても勝てない、ということを意味しているのではないか。勝負の世界に生きる人間の言葉は、まさに本質を突いている。

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