前回(第44回)の記事で、5Gの特徴とその期待について解説しました。5Gは、IoT(Internet of Things)における次世代通信基盤として、各国で大きな期待を背負っています。なおかつ新産業の発展に欠かせないものだと私は考えています。日本はもちろん、中国と米国では政府が積極的に5Gの開発支援を行い、各国とも2019年にはサービスを開始する気配が出てきています。

日本の将来と5G

伊本貴士=メディアスケッチ 代表取締役、サイバー大学客員講師
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 日本ではNTTドコモが中心となり、モバイル通信の分野で積極的に新技術開発を行ってきました。国際標準として採用されたものもあります。ソフトバンクも積極的に米国の通信事業者に投資や買収を行ってきたため、海外で影響力があります。モバイル通信の分野は、日本のお家芸ともいえます。

 ところが、5Gの登場により、モバイル次世代通信は携帯電話だけではなくIoT分野も対象となりました。スポーツに例えるなら、「ルールが若干変わった」という感じがあります。先行してきた日本勢にとってここは踏ん張りどころですが、その他の国にとっては、またとないチャンスです。

 これから日本は絶対に負けられない戦いに挑むことになるわけですが、まず、ルールが変わったので、何を達成すれば勝ちなのかを改めて確認しなければなりません。

 間違っても「5Gを携帯電話で使って通信速度を上げる」ということをゴールにしてはいけません。それでは4Gと何も変わらないどころか、5Gの価値の半分も生かせないからです。

 私なりにゴールを設定すると、「あらゆる産業で5Gの活用を進め、これまでになかったような製品やサービスを次々と生み出す」となります。

5Gで最初に目指すもの

 率直にいって、4Gまでは地方を切り捨ててきたと私は感じます。携帯電話事業者もビジネスですから、人口の多い地域から整備していくのは当然です。採算の合わない地方でもそれなりに基地局を立てる努力をしてきたと思いますが、基本的には今でも普及したかどうかという議論をする際に使われる指標は「人口カバー率」です。

 5Gでは、都市は当然ですが、地方でも利用できるようにしなければ、最終的に5Gは普及しないというのが、私の考えです。例えば、自動運転による配送を実現する際に、日本中どこでも通信可能にするには5Gしか選択肢はありません(衛星通信は速度が遅すぎるからです)。

 少し地方に行くと通信ができなくなるということが起こった場合、その製品やサービスの信頼度低下を招くため、企業は5Gを使ったサービスを開発しません。開発したとしても、例えば東京23区限定などとなり、かなり小規模な市場になることでしょう。

 よって、どんな形でもよいので、日本の国土全体をカバーするという考え方が必要です。そのためには人口カバー率ではなく、国土全体をどのくらいの範囲でカバーするかを示す「エリアカバレッジ」を指標とすべきでしょう。