製品という概念がなくなる世界

 これから先、複数の企業がカスタマイズ製造を始めた場合、世の中から特定の仕様(スペック)を示す「製品」という概念がなくなる可能性があります。つまり、「既製品を買う」のではなく、「欲しいものをオーダーする」という買い方に変わるのです。

 この時、購入者はどこにオーダーするのでしょうか。この場合、商品のスペックはどこにオーダーしても注文通りの同じものができるので、そこで差はつきません。マスカスタマイゼーション時代における競争優位のポイントは3つあります。

 第1のポイントは、どれくらい柔軟にオーダーに応えられるのかという「柔軟性」です。例えば、とても大きなサイズや、ユーザーがデザインした模様の服を製造できるような注文にも対応できる企業は大きな優位性を持つことになります。

 第2のポイントは、「ブランド」です。ブランドは企業に対するイメージです。イメージには個人差がありますが、一般に米Apple社という企業は、デザイン性の高いスマートな製品を提供するというイメージ戦略が成功して日本では高いシェアを誇っています。

 第3のポイントは、「付加機能」です。例えば、本棚といえば主機能は本を格納することですが、地震が来ても倒れない、抗菌やほこりが入らないなどの付加機能がつくと「魅力的な製品を作ってくれる企業」ということになります。

生産の複雑化と解決策

 ここまで、「製造業が目指す理想像は、もう見えている」という話をしてきました。今後は、それに向かって1歩ずつ進み始めることが必要になります。

 こうした理想を実現するには、非常に複雑でダイナミックな生産のあり方が必要になり、簡単ではありません。そのため、どこでも真似できるわけではない優位性が生まれます。まず歩みを1歩進めることで視界が開けるというのは、これまで本コラムで何度も述べてきた通りです。

 この複雑な生産を実現する技術が、IoT(Internet of Things)や人工知能であるということは分かっています。1度、自社で少量でもよいので、カスタマイゼーションが可能かどうか検討してみてはいかがでしょうか? さまざまな課題が見えると同時に、夢のある将来が見えるかもしれません。

 最後に伝えておきたいのは、カスタマイゼーションは製造業だけの問題ではないということです。農業でも注文に応じた生育を行う。保険も顧客ごとに商品の内容をカスタマイズするなど、どの業界においても「カスタマイゼーション」という概念が今後重要になってきます。

 私は、「欲しいものはインターネットでオーダーすればよい」という常識が定着するまで、もう5年もかからないのではないかと予想しています。