「先行開発と量産設計は、それぞれ別の設計者が担当するのがよいか、それとも同じ者が両方を担当すべきか」──。仕事柄、こうした質問をよく受ける。先週もこの質問を受けた。

 私はこう回答する。「組織のありようや人の育成など、考える視点はいくつかあるが、重きを置きたいのは、『その設計者は先行開発と量産設計、どちらの設計力に適しているか』というところだ」と。

 先行開発の設計力と量産設計の設計力は共に、第4番目の設計力要素が「人と組織」であった。つまり、「人」のありようが重要なのだ。先行開発の設計者と量産設計の設計者のありようは大きく異なる。先行開発と量産設計の「人」については個別に取り上げてきたが、ここでは両者を比較する。

 一言で表現すると、先行開発の人は未知を切り開く「開拓者」、量産設計の人は100%やりきる「こだわりの人」だ。

課題解決力があるか

 まず、先行開発に携わる設計者は開拓者でなければならない。職場の重要課題や大きな技術課題を自ら見いだし、その課題に立ち向かって乗り越える必要がある。そのために、さまざまな課題解決力を備えなければならない。

 具体的には、課題把握力や情報収集分析力、上位システム理解力、他社製品調査力、ベンチマーク力、特許調査力、実機調査力、上位システム実験力、ロードマップ活用力、上位システム動向情報収集と分析力、特許出願力……などの力が必要だ。先行開発は、ルーチンワークの(決まった仕事を繰り返す)スキルだけでは対応できない。

 これらの力は、新たな技術獲得へ踏み出し、新規製品の開発に挑戦するなど、果敢な取り組みと行動から生まれる。リスクを恐れすぎてはいけない。変革を意識すること。挑戦者であり変革者でなければならない。

リーダーシップ力があるか

 一方、量産設計に携わる設計者は、先行開発のアウトプットを、品質とコスト、納期を100%で達成する取り組みを行わなければならない。抜けのない確実な取り組みが求められるのだ。そのためには、職場に積み上げられた知識や知見、ノウハウを活用できる必要がある。積み上げられた基盤技術をしっかりと生かさなければならない。

 ただし、技術検討にとどまっていてはならない。量産設計に携わる設計者は組織間を調整できる必要がある。量産設計は、多くの職場のメンバーが同じ目標に向かって取り組むチームプレーで成り立つ。従って、設計や品質、生産技術、生産など、立場の異なる部門の関係者が同じ目標に向かって取り組めるように、全員のベクトルを合わせるリーダーシップ力を持たなければならない。

 加えて、顧客の信頼を得るために、顧客との技術折衝力も必要だ。量産設計段階では顧客との打ち合わせが多くなる。当然だが、顧客の要求はしっかりと受け止めなければならない。逆に、自社の技術的な見解を主張すべき場面もある。しっかりと議論を戦わせ、技術的な整合点を見いだすことを求められる。そうすれば顧客の信頼を獲得できる。

 つまり、量産設計を担う設計者は技術者であることにとどまらず、多くの組織をまとめるリーダーシップ力と顧客の信頼を得る技術折衝力の2つを鍛えなければならない。もちろん、品質とコスト、納期の3つについては厳守だ。こうした力が備わってはじめて量産設計に担える設計者といえる。

 先行開発で見られる最大の課題は、アイデアがあっても最初から諦めてしまって実行に移さないこと。量産設計のそれは、時間的な余裕がなくなるとやるべきことを形式的に行ったり、パスしたり、コスト上昇を許したりすることだ。前者には挑戦の心が、後者には厳守の心が大切だ。

 このように先行開発と量産設計では、設計力が異なり、求められる設計者像も同じではない。同じ設計者(グループ)が先行開発と量産設計を行うのか、異なる設計者(グループ)が行うのかは職場や会社により異なるであろう。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら