移動中の出来事だ。電車から降りようとキャリーバッグのバー(取っ手)を引き出そうとしたが動かない。そういえば、バーを押し込む際に気になる音がしていた。ガチャ、ガチャと引き出そうとしたが動く気配すらなく、結局手で下げて移動する羽目に陥った。愛用してきたキャリーバッグが、突然大きくて重い難儀な代物と化してしまった。汗をかきかき、つくづく思ったことは、「バーを引き出せないのは重大故障だ。緊急避難的に使える手段がバッグに備えてあれば…」。

 緊急避難的に使える手段とは、安全設計のことである。今回は安全設計を自動車部品メーカーの立場で取り上げたい。

 安全設計の基本は、開発対象部品が故障しても重致命故障には至らない設計的処置をとっていることだ。重致命故障は暴走や火災につながる故障である。そこまでではなくともエンストや走行不能などの基本機能の喪失のような重大故障も対象になる。もちろん、排出ガスの規制値や燃費規制値の違反といった政府規制違反も忘れてはならない。

 安全設計は2つの面から検討が必要である。システムの安全設計部品自体の安全設計だ。

システムの安全設計

 システムの安全設計では、部品メーカーは開発対象部品が故障した場合のシステムへの影響を知る必要がある。次に、その故障の影響が、重致命故障や重大故障に至らない仕組みがシステムとしてとられていることを見極めなければならない。フェールセーフなどの処置である。例えば、スピードメーター用のセンサーが故障した場合、スピードメーター表示はできなくても、一定の変則制御は可能、すなわち退避走行が可能なシステムになっていることだ。

 さらに、次のような気配りも必要になる。多重通信にぶら下がっている部品が故障した場合、他のコンポーネントへの影響がないかどうかを見極め、影響がある場合はシステムメーカーへ打ち上げなければならい。採られた対策も確認することが必要だ。逆に、他のコンポーネントが故障した場合に、自分たちが開発している部品への影響を調べる。影響があるならばどのようなものかを見極め、同じくシステムメーカーに打ち上げなければならない。部品メーカーであってもシステムメーカー的な視点が必要なのだ。

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