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寺倉 修=ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 先月(2019年4月)、ブラックホールの姿を初めて捉えたと大きく報じられた。理論上予測された現象が100年余りの時を経て観測された。理論を検証する第一歩が踏み出されたのだ。この報からは、理論にとっての検証(根拠)の重みが伝わってくる。ものづくりも同様だ。結論に至った「考え方」や「根拠」が大切であるということを改めて思う。

 私の経験を振り返ると、自動車部品の開発設計に2年を要したとして、ほとんどは、結論を導くための考え方や根拠を明らかにする取り組みだった。だからといって、十分なリソースが投入されるということではない。人員や開発費は不足しがちだった。それでも、もちろん納期は厳守。だが、私たちだけの話ではなく、これが一般的な開発設計職場が直面する現実だろう。

 こうした厳しい環境でも、開発設計者は考え方や根拠を追い求めなければならない。それにはまず、追い求める思いを持つことだ。かつ、取り組みがしっかりしていると、求めた考え方や根拠のレベルが高まる。その取り組みが、このコラムの命題であるやりきる力、すなわち「設計力」だ。今回は設計力の中の「プロセス」を、考え方や根拠を明らかにする活動として取り上げたい。

 既に述べた通り、量産設計段階の設計力は「7つの要素」から構成される。最近は主に先行開発段階の設計力を取り上げているが、この段階の設計力も「7つの要素」から構成される。両者とも第1番目の要素はプロセスだ。量産設計段階のそれは「設計プロセス」だった。先行開発段階は「先行開発プロセス」である。両プロセスとも多くのステップから成るが、共に考え方や根拠を明らかにするという視点が重視されている。以降、「先行開発プロセス」について取り上げる。

 先行開発は、「ダントツの目標値」を見いだし、その目標値を実現する技術的なめどを付けることに尽きる。ダントツ目標値を見いだすには、考え方や根拠を明らかにすることが必須だ。この取り組みは次のような開発スタート時点の取り組みから始まる。

[1]新製品開発の基本方針
世界を相手にするのか、それとも特定の顧客にターゲットを絞るか。汎用システムを狙うのか、もしくは限定システムを狙うのか、など。
[2]開発対象製品の選定根拠
その分野は成長性があるか、製品は汎用性があるか、など。
[3]製品開発方針
顧客の「真にニーズ」を見極めているか、ベンチマークに基づいているか、など(真のニーズは第49回のコラムで取り上げた)。

 対象とする顧客、成長性の判断、真のニーズやベンチマークの見極め、これら全てがダントツ目標値を判断する根拠だ。このように、開発初期段階の取り組みも、ダントツ目標値設定の根拠を積み上げているのだ。値だけ決めようとしても決まるものではない。先行開発段階のダントツ目標値は、その製品が勝負するコンセプト(売り)を決定する。一歩一歩根拠を積み上げる取り組みをしなければならない。

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