寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 「設定したい目標値を開発期間内に達成できそうにありません。目標値が決まらず、困っています」。先日、私はセミナーの受講者からこうした相談を受けた。「目標値を開発の途中で見直す」と間違ったことを言う設計者と比べると、この受講者は目標値について意識が高いといえる。だが、もう一段高めなければならない。

 これまで折に触れて述べてきた通り、目標値が競合に対する「優位性」を決定し、顧客の「信頼」を左右する。目標値は、どのメーカーに勝ちたいのかを表す指標であり、顧客の信頼を何で担保したいかを表す指標でもある。従って、何をおいてもまず、目標値を決めなければならない。目標値ありきだ。

 後は、ひたすら知恵と工夫でその値を突破する。限られた開発期間の中でそれを実現しなければならない。「目標値を決める力」と「達成する力」、それこそが「設計力」だ。

 このコラムは、「世界No.1製品」を達成する取り組みをテーマとしている。その中の「先行開発段階」で設定する「ダントツ目標値」の妥当性は、4つの要件を踏まえなければならないと第45回のコラムで述べた。その4要件は、[1]目標項目の妥当性、[2]目標値の妥当性、[3]システム動向との整合性、[4]成長タイミングとの整合性、だった。今回は[1]の目標項目の妥当性を取り上げよう。

 第37回のコラムでは新製品開発の例(以下、先の例)を取り上げた。この例ではダントツを目指す目標項目に性能とコストを選んだ。これらの「項目の妥当性」は、ワールドワイドなベンチマークから見いだした、競合メーカーに共通する弱点をよりどころとした。そして見いだした弱点とは、「上位システムの視点から考えていない」と「既存の技術から抜け出ておらず、新たな発想の技術がない」という2点だった。これらを我々は攻めどころと判断。そして、この「根拠」を踏まえて性能とコストを選んだのである。

 このように、ダントツ目標項目を決めるには根拠が必要だ。製品仕様のQCD(品質、コスト、納期)のうちQだけを取り上げても、機能や性能、信頼性、体格、美しさ、重さ、取り付けやすさ、コストなど、数多くの要素から構成される。全ての要素をダントツ目標項目の候補にすることは現実的でない。そのため、根拠を踏まえた項目の絞り込みが必要となるのである。

 先の例のベンチマーク結果は、既存メーカーの性能目標値には、システム視点からの検討が不足していることを示していた。これを踏まえ、システム視点からしっかり調査すれば、性能に「真のニーズ(顧客のうれしさ)」があるに違いないと判断。そして、この判断の下、性能をダントツ目標項目に選んだのである。

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