寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 検査不正がなくならない。出荷検査の目標値を満足できないことも少なくないようだ。私の仕事柄の経験だが、「品質不具合とは何か?」と問い掛けると、多くの場合、壊れるとか壊れないなどの故障モード(状態)を示す表現が返ってくる。だが、私が設計者として期待する回答は、「目標値を満足しなくなる」だ。

 故障の状態は、折損や破損、脱落などさまざまだが、問題は、お客様に負の影響を与えることにある。負の影響とは、お客様に約束した機能や性能が低下したり、働かなくなったりすること、すなわち、目標値を満足しなくなることである。これが品質不具合である。

 目標値は、出荷時の目標値(以下、初期性能と呼ぶ)だけではなく、市場に出てから、例えばX年の間はクリアしたい目標値(以下、耐久性能と呼ぶ)がある。言うまでもなく、ものづくりはこれら2つの目標値を満足しなければならない。一般に、初期性能が目標値を下回ると、耐久性能も目標値をクリアできなくなる可能性が高まる。

 さらに、設計者に「後工程に渡す量産図面は目標値を満足しているか?」と問い掛ける。すると、ほとんどの場合は「満足している」と返ってくる。ここで言う目標値は、開発初期段階に決定した目標値(以下、設計目標値と呼ぶ)である。量産図面は、設計目標値の設定から構想設計、詳細設計、試作図面作成、試作品製作および評価までを経て完成する。このプロセスを踏む中で、量産図面は設計目標値を満足しているものと思い込んでしまうのだ。そこで、「設計要因の出荷検査不良はないか?」と聞くと、多くの設計者はハッとする。さらに、「出荷検査を満足すれば目標値を満足しているのか?」と畳み掛けると、返答がない。耐久性能が思い浮かばないのだ。設計目標値は、初期性能と耐久性能両面から考えなければならない

 もちろん、目標値の100%の達成を目指して取り組むのだが、検討抜けを完全に防ぐことは至難の業である。出荷時の全数検査で不具合品を取り除き、市場のクレームには迅速に対応して、是正処置をとる。ある程度やむを得ないことだろう。

 言うまでもなく、出荷検査で目標値を満足しないものが多発することはあってはならない。仮にそうした状況に陥れば、量産図面が目標値を満足しているかどうかまで遡(さかのぼ)って確認する必要がある。さらに言えば、目標値の妥当性まで遡ることも考慮しなければならない。

 このように、目標値を達成する取り組みは実に大変だ。だが、ものづくりとは目標値の設定と達成に尽きるので当然とも言える。

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