寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者
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 ものづくりの「不正」ニュースは枚挙にいとまがない。KYBの免振・制振不正はまさかと思った。その一方で、この手のニュースを目にしてもあまり驚かなくなっていると感じるのは私だけであろうか。日本のものづくりは、品質とコストに対する「こだわり」と、納期の「厳守」に愚直なほど徹底的に取り組むことで、世界から一目置かれていたはずだ。その信頼が揺らいでいる。

 十数年ぶりにクルマを買い替えた。安全などさまざまな機能があり、技術の進化をしっかりと感じた。だが、もっとこだわってほしい所があった。シフトレンジの動きの感触や、ウインドーが閉まりきる時のピラーとの接触音などなど。これまで何台か乗り換えてきたが、こうした違和感を覚えたことはなかった。ものづくりへの「こだわり」が少し弱くなっているのではないかと感じた。杞憂であればよいのだが…。

 本コラムでは、「こだわり」とは「やりきる」ことであり、そのためには業務を「形骸化」させてはならないと述べてきた。しかし、不正ニュースであふれるものづくりの昨今の状況を受けて、改めて触れておきたいと思う。

 「形骸化」とは、「やった」という実績づくりが目的となることである。大切なのは「内容・質」の伴った取り組みだ。不正を報じるニュースでは、多くの企業が担当者に責任を押し付けるかのような姿勢に終始している。だが、言うまでもなく担当者レベルの仕事には抜けや不備がある。この点を踏まえて、抜けや不備に気づいて軌道修正するための仕組みが職場には必ずある。開発設計のプロセス、生産準備のプロセス、生産開始後の是正処置のプロセスなどである。

 これらのプロセスには、下位の者が上げてきたアウトプットを上位の管理者が検討・議論し、審議・決裁するための仕組みが含まれている。デザインレビューや品質決裁会議などである。これらはマネジメントプロセスを構成している。例えば、開発設計のプロセスは、骨格となる基本プロセスと、基本プロセスのレベルを高めるサポートプロセス、さらにこのマネジメントプロセスから成る。

 このマネジメントプロセスが業務の抜けや不備に気づいて軌道修正する場であり、そのためにこそ存在する。にもかかわらず、市場まで不具合が流出し、かつ何年も続いていたとすれば、マネジメントプロセスが有効に機能していなかった可能性が高い。すなわち、マネジメントシステムが形骸化しているのである。

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