寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が、3億kmを旅して小惑星「リュウグウ」に到着。探査ロボットを着陸させることに成功した。小惑星の上を移動できる探査機の着陸に成功したのは世界で初めてとのことだ。

 JAXAは小惑星から岩石を持って帰る方針を打ち出し、着陸する惑星を選んで、持ち帰る岩石の量などの目標値を決めた。この過程でさまざまな技術課題の目途(めど)付けをしてきたはずだ。今はリュウグウで、これら取組の検証・評価が進行中である。

 本コラムで取り上げている「世界No.1製品」の開発は、「開発する製品を選ぶ方針」を打ち出し、「開発製品を選定」する。そして、その製品を世界No.1にする「目標値」を決め、「技術課題を目途付け」する取り組みだ。製品が市場に出ると、それまでの取り組みが市場から「検証・評価」を受けることになる。

 はやぶさ2の取り組みも「世界No.1製品」のそれも、プロジェクトの規模こそ違えど基本は同じだ。製品が市場の検証・評価に耐えて「世界No.1製品」になれるか否かは、開発段階の取り組み次第である。つまり、はやぶさ2も打ち上げるまでの取り組みで既に成否は決まっている。

 だからこそ、開発段階の取り組みを充実させなければならないのである。

 さて、先の第36回第37回のコラムで、「世界No.1製品」を目指した開発段階の取り組み事例を取り上げた。そこでは、「ダントツ」を「性能」と「コスト」で実現すると決定したところまでを紹介した。次に続く取り組みは、その性能とコストの具体的な値である「ダントツ性能の目標値」を見極める活動である。そこで、今回は「ダントツ性能の目標値」の見極め方を取り上げよう。

部品ではなくシステムとして捉えて競争力を高める

 当時、我々は自動車メーカーが出してくる仕様通りの部品を実現するメーカーだった。そこで、選定したセンサーの「ダントツ性能の目標値」を自動車メーカーから聞き取ろうとした。ところが、その自動車メーカーでは製品を使用している部署と外注先の窓口を担当している部署とが別になっている上、窓口からは外注先に発行される仕様書以外の情報を得られなかった。一方で、我々はその製品の使用部署の誰とも面識がなく、「ダントツ性能の目標値」について意見交換できる状況ではなかった。

 そこで、我々は自ら「ダントツ性能の目標値」を見極める活動を開始した。「部品メーカー」ではなく、「システムメーカー」として取り組むことにしたのだ。自動車メーカーにとっての利点である「うれしさ」を掘り起こし、「顕在化していない商品仕様」を把握する活動である。言い換えるなら、お客様の「真のニーズ」を把握することだ。

 ここで、「部品づくり」としての取り組みを振り返っておこう。それは、自動車メーカーから提示される「商品仕様」を「製品仕様」に置き直すことだ。システム上必要な機能・性能とその目標値を、車両環境や市場環境を考慮した上で、安全率や余裕度を加味しながら、ものとして具現化する。つまり、部品メーカーの取り組みは、自動車メーカーから提示されるシステム上の必要条件を、市場品質を保証する十分条件に置き換えることである。

 この取り組みだけでもハードルは高い。だが、「真のニーズ」を把握する活動とは無関係なので、「ダントツ性能の目標値」の見極めにはつながらない。その見極めには部品メーカーの立場から一歩踏み出し、システムメーカーとしての活動が必要だ。

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