寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 夏休みでリフレッシュした人も多いだろう。このコラムも一息入れ、「設計力」について振り返ってみる。

 先のコラムで次のように述べた。製造業は100年に1度の変革期を迎えたと言われている。だが、社会環境がいかに変わろうと、製造業の基本は競合メーカーに対し「優位性」を保ち、同時にお客様の「信頼」を得続けることにある。

 これらの「優位性」と「信頼」を両立させるには、設計段階の取り組みが品質・コストの80%を決めるという現実を踏まえ、それにふさわしい設計段階の取り組みを行わなければならない。

 具体的には、「世界No.1製品」であるための「ダントツの性能」と「ダントツのコスト」を達成する設計段階の取り組みを行うことだ。この取り組みは[1]先行開発段階と、このアウトプットを受ける[2]量産設計段階の取り組みから構成される。

 [1]の先行開発段階は、まずお客様にとっての「嬉しさ」とそれを表す商品仕様(以下、「真のニーズ」と呼ぶ)を把握する。続いてこの「真のニーズ」を、造る側の立場の表現である製品仕様、すなわち「ダントツ目標値」に置き換える。その上で、ダントツ目標値の技術的な実現の見通しを探るのである。

 ところが、ここで真のニーズの見極めが1つめの大きな課題となる。真のニーズはお客様から提示されるとは限らない。多くの場合、造り手がさまざまな取り組みを工夫して見極めなければならない。

 それでも何とか真のニーズを見極めると、次はそこから得られるダントツ目標値が持つ技術的な課題をめど付けする必要がある。それぞれの職場には、過去から積み上げてきた基盤技術がある。だが、職場の基盤技術だけでは、ダントツ目標値が持つ技術課題(以下、「ネック技術」と呼ぶ)への対応策がすぐに見つかるとは限らない。

 ちなみに、私の経験から言わせてもらうと、ダントツ目標値を設定するような新規性が高く高付加価値が見込まれる製品は、必ずネック技術を持つ。このネック技術のめど付けが2つ目の大きな課題だ。

 これら2つの課題、すなわち「真のニーズの見極め」と「ネック技術のめど付け」をやりきる取り組みが「先行開発段階の設計力」である。

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