寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 「日経ビジネス」が2018年7月23日号で「イノベーションは起こせる」を特集していた。読んでいて、数年前に企業で講演した時の経験を思い出した。

 その企業はある業界の先頭を走る企業だった。テレビである番組を見て感動したと話した時のことだ。その番組は、燃料電池車の世界初に向けた開発を取り上げたものだ。紹介した後で、役員を含む数十名の技術系の方々に「感動した方は手を挙げて」と問い掛けた。もちろん多くの手が挙がると思ってのことだったが、なんと誰一人として手を挙げなかった。全くの予想外で、これには心底驚いた。私の伝える力の拙さを差し引いたとしても、頭の中に疑問符が渦巻いた。

 イノベーションについてはさまざまなことが言われているが、私はほとんど忘れてしまう。しかし、少し前にものすごく腑に落ちる表現に出会った。それは「たとえ変人呼ばわりされようが、失敗して非難されようが、何が何でもやり続ける人がイノベーションを起こしてきた」という表現だ。

 「世界初」や、本コラムで命題としている「世界No.1製品」への取り組みは、それを行っている企業にとっては、まさに「イノベーション」であろう。そのためには、何が何でもやり続けることができなければならない。このマインドは、裏返せば、世界初や世界No.1製品と聞いて「感動する心」であるはずだ。

 本コラムでは世界No.1製品を目指すための仕事の取り組み方や仕組みなどを取り上げている。だが、その前提として、「世界初」と聞けば輝く目や、感動する心がなければならないと私は思う。イノベーションもしかり、だ。

 事実、私はそうした事例を知っている。私の知人が、誰もできないと思ったダントツの短期間で新製品を開発したのだ。不可能と思えることを可能にした珍しい例である。まさにマインドのなせる業だった。

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