開発設計(詳細設計)における未然防止の品質手法としてFMEAはよく知られている。では、「工程FMEA」はどうだろうか。「工程FMEAを実施しているのは5割。実施していても、形骸化しているところが多い。しかも、この形骸化はISO9001が推奨する工程FMEAのワークシートに原因がある」。こう指摘するのは、デンソーの開発設計者出身で、トヨタグループの品質スペシャリスト「SQCアドバイザー」も務めた皆川一二氏だ。「日経 xTECHラーニング」において講座「工程設計トラブルを未然に防ぐトヨタの決め手『工程FMEA』」の講師を務める同氏に、トヨタグループが実践している工程FMEAと国際標準化機構(ISO)推奨の工程FMEAの違いを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

まず、「工程FMEA」とは何か、初心者でも理解できるように分かりやすく教えてください。

皆川氏:工程FMEAは、生産ラインの工程設計を対象とするFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)です。工程設計において品質不具合(以下、不具合)を未然に防ぐ手法として使います。工程設計において生じる可能性がある不具合を洗い出し、不良品を造らない工程にする。かつ、万が一不具合が発生した場合でも、不良品を流さない工程にする。これが工程FMEAの目的です。

 トヨタグループではこの工程FMEAは「マスト(必須)」です。「工程FMEAをやらずして、工程設計したとは言えない!」と強調したい。実施していなければ、ものづくりの次のステップである設備設計以降に進むことができないのです。

 なお、製品の開発設計を対象とするFMEA(設計FMEA)を、トヨタグループでは「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)」と呼びます。しかし、なぜか工程DRBFMとは言いません。でも、基本的な考え方は同じです。

トヨタ自動車東日本の生産ライン
トヨタグループでは工程設計の際に工程FMEAを実施し、不具合を未然に防ぐ。工程FMEAを実施しないと以降のステップに進めない。(写真:日経 xTECH)
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「FMEA」と聞くと、開発設計(詳細設計)における未然防止手法を思い浮かべてしまいます。工程FMEAは広く知られていますか。また、実施している企業は多いのでしょうか。

皆川氏:国際標準化機構の品質マネジメントシステムに関する規格「ISO9001」で定められているため、製造業の中で工程FMEAの知名度は高いと思います。実施していないと欧米企業などと取引することができません。しかし、工程FMEAを実施している日本企業は5割程度ではないでしょうか。率直に言って、少なすぎると思います。

 さらに問題は、「実施している」と主張する日本企業の中でも、正しく実施していると言える企業が意外に少ないことです。ISO9001で決められているから、一応、実施しているだけ。形骸化していて、本当に効果的な工程FMEAを実施していない日本企業が目に付くのです。