品質不具合を減らし、世界の競合に打ち勝つためには、生産プロセスだけでなく、開発設計プロセスも体系化すべきだ──。ワールドテック代表取締役で元デンソー開発設計者の寺倉修氏はこう説く。「技術者塾」において「世界No.1製品をつくるための開発設計プロジェクト指南」(2019年1月21日スタート)の講座を持つ同氏に、開発設計プロセスの重要性について聞いた。(聞き手は近岡裕=日経xTECH、高市清治)

ワールドテック代表取締役(元デンソー開発設計者)の寺倉修氏
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デンソーが電子ミラー用の電子制御ユニット(ECU)を、開発開始から約1年半で量産にこぎつけたと報道されています。新製品の開発設計としては異例の早さだと考えてよいのでしょうか。

寺倉氏:驚異的に早い。というのも電子ミラーはベースとなる製品がない、革新的な新製品だからです。通常なら図面を出すまでに2年、生産準備に1年、トータルで3年程度は要するのではないでしょうか。

 まず整理しておきたいのですが、一口に「新製品」といっても色々あります。圧倒的に多いのは、ベースとなる製品の機能や性能をアレンジした「類似製品」です。スターターやエンジンなどは新製品が出たとしても既存の製品をベースにしていますから類似製品。新製品のうち9割以上が類似製品と考えていいでしょう。新規性の度合いに応じて「次期型新製品」や「次世代型新製品」などもありますが、電子ミラーやETC(電子料金収受システム)のようにベースとなる製品がない、新規性が非常に高いものは「革新的新製品」と言えます。

 最近はシミュレーション技術が進んで開発速度が高まっています。しかし、それにしても量産化まで約1年半とは驚きですね。

開発設計期間を短縮できる、優れた開発設計プロセスを採用したのでしょうか。

寺倉氏:残念ながら「優れた開発設計プロセス」といった便利なものはありません。多少はアレンジできるとしても基本は同じ。取るべきプロセスを愚直にたどるしかないのです。

 開発設計プロセスとは、顧客のニーズを把握してから、生産技術や生産部門、外注企業などに図面を渡すまでのプロセスを指します。一般には前半の「先行開発プロセス」と後半の「量産設計プロセス」に分けられます。先行開発プロセスは、顧客のニーズに応えるための技術的な課題を乗り越えるプロセスです。量産設計プロセスは、品質不具合が出ないようにする詳細設計となります。

 最近は、大手か準大手の企業なら量産設計プロセスを体系化しているようです。しかし、先行開発のフローを体系化して、明文化している企業はほとんどないと思います。実は先行開発プロセスこそが、その製品の性能とコストを決め、競争力を左右します。にもかかわらず日本の製造業界ではこのプロセスを軽んじているのが実情です。この意識を変えないと、激化する一方の他国製品との競争に打ち勝てないと私は考えています。