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皆川一二氏=元トヨタグループ「SQCアドバイザ」、ワールドテック講師、小松開発工業顧問

 「品質問題の頻発に悩む日本企業が増えている」と警鐘を鳴らすのは、デンソーの開発設計者出身で、トヨタグループの品質スペシャリスト「SQCアドバイザ」も務めた皆川一二氏だ。「技術者塾」において講座「品質完璧マスターシリーズ」の講師を務める同氏に、日本企業が品質力の低下を食い止め、向上へと転じるヒントを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

これまでのインタビューで日本企業の品質力が低下していることは伝わったはずです。そこで、今回はそれを食い止めるためのヒントを探りたいと思います。まず、品質に関して特に気になっていることを教えてください。

皆川氏:自動車業界で最近問題だと感じているのは、電動化や自動運転化ありきで進んでいることです。何のために電動化や自動運転化を実現するのかという議論を尽くさなければならないはずなのに、「ありき」で進んでしまっているように感じます。

 本来、どのような機能を追求するかは、品質機能展開(QFD)を使ってお客様が何を求めているかからスタートすべきです。お客様が求める機能を実現することが目的なのに、それをわきに追いやって、電動化や自動運転化といった手段だけを追求しているのは気掛かりです。

 QFDを実施した結果、自社が想定するお客様が、排出ガスがきれいな動力源を求めているというのなら、電動化を積極的に進めてもよいでしょう。あるいは、トヨタ自動車社長の豊田章男氏が言った通り、「死亡事故をゼロにするために開発している」というのなら、自動運転を開発するのは間違っていません。しかし、「欧州の有名な企業がそう言っているから」とか「世界のトレンドだから」とか「米グーグル(Google)が力を入れているから」といった理由で開発を進めていたとしたら、それは間違いです。

 日本の政治は外圧に弱いと言われてきましたが、高品質のものづくりを行うべき日本企業がそれでは困ります。しかるべき品質手法に基づいて論理的に判断して開発を行わなくてはなりません。

品質問題に悩む日本企業が増えている背景に何があると思いますか。

皆川氏:分業化を進めすぎた影響で、全体を見る人がいなくなっていることが大きいと思います。「全体最適」の視点が欠けているのです。例えば、自動車業界では設計者が実験を行わなくなっています。実験課が専門的に実験をこなすからです。確かに、この方が業務を効率化できるという利点があります。しかしその半面、自ら実験を手掛けないことで、設計者は感性を磨く機会や暗黙知を得る機会を失ってしまったと思います。

 最近ではCAEも分業化しており、CAEを解析担当者に任せてしまっています。結果、設計者で全体の品質を眺める人がいなくなってしまいました。どんどん分業化し、細分化された一部のことしか担当しない…。このことが品質軽視につながっていると私は見ています。

 実は、品質手法の使い方についても同じことが言えます。全体最適の視点がないために、せっかくの品質手法が効力を発揮しないのです。