デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション;DX)への対応が日本企業にとって喫緊課題となっている。デジタル技術を活用した新しいビジネスやサービスを生み出し、顧客価値を最大化しなければ淘汰される時代に入りつつあるのだ。デジタル変革への対応を支援すべく、KDDIは「KDDI DIGITAL GATE」を設立した。同社経営戦略本部 KDDI DIGITAL GATE センター長に、デジタル変革の成功の条件を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

「KDDI DIGITAL GATE」が人気と聞いています。メディアでも名前をよく目にするようになりました。

山根氏:KDDI DIGITAL GATEは2018年9月に設立したばかりなのですが、おかげさまでたくさんのメディアから取材依頼がありました。立ち上げてから半年で、150社を超える企業の方が来訪し、ご見学されたりお客さまが抱えるDXの課題についてワークショップを行ったりしました。もちろん、その中で実際の開発を我々が支援するケースも増えてきています。

山根隆行氏=KDDI 経営戦略本部 KDDI DIGITAL GATE センター長
国内製造業でのエンジニア経験を経て、2009年KDDI入社。法人向けサービスの企画業務に従事し、アジャイル開発チームの立ち上げメンバーとして参画。その後、Scrumプロダクトオーナー(PO)として活動、および社内でのPO育成に従事。2018年9月より現職。
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関心の高さが分かります。日本企業で何が起きているのでしょうか。

山根氏:「これからはデジタル変革しなければならない」と、社長がイノベーション推進部やデジタル推進部といった部署をつくり、社長直轄で全社的なイノベーションを集中的に進めようとするケースが、最近の日本企業で増えています。

 海外企業ではこうした部署には外部から専門家を呼ぶことが多いのですが、日本企業では専門的な知見があるか否かに関係なく、ある日突然異動が決まるというケースがほとんどです。その上、経営層からもあまり具体的な方向性が示されないことが多い。にもかかわらず、案件がぽんぽん飛び込んでくる。こうした中で、「どうしたらいいのか分からない」という悩みを抱えている担当者がたくさんいるのです。また、社内にデジタル技術に精通したエンジニアがいないこともデジタル変革が進まない大きな要因です。KDDI DIGITAL GATEではそうした悩める担当者がデジタル技術を活用したビジネス(サービス)を持続的に創り出していくことを支援しています。

KDDI DIGITAL GATEの扉を叩くと、どのように支援してもらえるのですか。

山根氏:まずは体験ツアーという形で、2時間ほどの概要説明や事例紹介、施設案内、簡易的なワークショップを実施します。「課題がもやもやしていてはっきりしない」とか、「やりたいことがたくさんあるけれど優先順位が付けられない」といったお客さまの悩みに対して、ワークショップを通じてできる限り具体化してスコープと優先順位を明確にします。

 ここからは有償になるのですが、本格的なサービスデザインとプロトタイプ開発に入ります。サービスデザインでは、デザイン思考をベースとした5日間のワークショップを通じて、ユーザーの潜在的な課題を発見し、ユーザーにとって価値がある最小限のプロダクトであるMVP(Minimum Viable Product)を決定していきます。MVPが出来たらすぐに開発チームがプロトタイプを開発して検証を行います。このように、ユーザー価値と技術的実現性の両面をできる限り小さく素早く検証していきます。

 加えて、人材育成の支援も行っています。企業がデジタル変革の業務を外部に発注し続けることは現実的ではありません。また、企業が組織レベルでデジタル変革するためには、デジタルとビジネスが一体となって動ける体制が必要で、両者の距離をできるだけゼロにすることが極めて重要です。そのためにはテクノロジーを使いこなせる人材を社内で持つ必要があります。顧客の企業がデジタル変革を持続的に生み出せる組織をつくれるようにトレーニングもKDDI DIGITAL GATEでは行っているのです。