「技術ロードマップ」の必要性が問われている。新技術の動向を踏まえ、技術・製品開発のシナリオと合った目標値を定めて、その目標値の妥当性を見極める活動だ。ロードマップにはどのような効用があるのか。どのように作成すればよいのか。日経 xTECHにおいて「技術ロードマップの役割と有効利用」の講座を持つ、ワールドテック講師で元デンソーの佐藤進氏に聞いた。(聞き手は高市 清治)

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「技術ロードマップ」とは何でしょうか。

佐藤氏:「技術ロードマップ」とは、一般的には「集約された知見に基づく技術の発展的な将来像」などと定義されています。新技術や新製品を開発・設計するシステムを円滑に進める上で、重要なツールです。急激に技術が進歩し、経済状況や市場動向が変化する今後は、技術・製品を効率的に開発し、コストを抑え、品質を向上させる上で必須だと考えています。将来の製品・技術開発にドライブをかける、必須のツールです。

具体的には、どのようなものでしょうか。

佐藤氏:ロードマップには国や技術系の審議会や研究会などが主体となって作成するケースもありますが、ここでは民間企業のロードマップを想定しましょう。ある企業が何らかの製品を開発する際、その企業が持っている技術や、今後発展させられるであろう技術を見据えます。そして市場や競合製品の動向を予測します。その上で、開発する製品の機能や性能の将来にわたるシナリオを描くのです。

 例えば、半導体メーカーが次世代CPUコアのロードマップを作成したとします。まずはメイン機能の目標値を定めます。例えば周波数は1年後に50MHz、3年後に120MHz、5年後には240MHzまで向上させるといった数値を示すのです。併せて、その他の付帯機能の目標値も定めます。キャッシュメモリーの容量やメモリーへのアクセス時間、消費電力、拡張性などです。

 こうしたロードマップは企業内全体で共有する必要があるので、分かりやすい図版などを示す必要があります。例えば、A4用紙1枚の「顔」がなければなりません。全体のボリュームはさまざまです。競合製品に負けない世界一の製品を開発するためのロードマップであれば、目標値の妥当性をしっかり説明できるレベルが要求されます。作成メンバーや、ロードマップ作成時に議論した内容や結論に至るロジックまで含めた詳細なものになるでしょう。これらのバックアップデータは、大規模なものではA4判用紙で数百ページを超えることもあります。

 その企業の今後の方向性やイメージを示す簡易なものなら、A4判1枚の「顔」と、そのロードマップを裏付ける技術に関するデータ集とロジックを示すレベルでよい場合もあります。簡易なロードマップでも十分、意味を持ちます。

どんな時に、どんな効果があるのでしょうか。

佐藤氏:質の高いロードマップを作成できているのが前提ですが、ある製品群の開発を進める際、それに携わるすべてのメンバーの現在の仕事のポジショニングに使えます。将来のための研究をしているメンバーや、次期製品を設計しているメンバーを含めて、今自分が何のために何をしているのかが認識できるのです。また、事業部や研究所のトップが決済する時の判断基準になります。予算をどの程度積み上げられるのか、研究者などのリソースをどう配分するか。こういった判断を円滑に決められる。誤解を恐れずに言えば、「開発・設計のタクトタイムを短縮」できます。ひいては製品の品質向上を図れる。開発・設計を円滑に進められる状況は、手戻りが少なく、無駄を省き、設計の質向上に時間を割けているはずだからです。

 ロードマップの効用は、その作成プロセスを知ることで納得できると思います。作成プロセスを誤らなければ、企業の事業性を高めるロードマップが完成するはずです。

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