前回は、SiC MOSFET電気特性モデルのうち電流特性に焦点を当てた。SiC MOSFETのスイッチング特性を正確に模擬するためには、電流特性のみならず、ゲート、ドレイン、ソースのそれぞれの間に寄生する容量特性を正確にモデル化する必要がある。これらの成分には、ゲート-ソース間容量Cgs、ドレイン-ソース間容量Cds、ドレイン-ゲート間容量Cgdの3つがある(図1)。

 MOSFETをスイッチ素子として用いる場合、ターンオン、ターンオフごとにこれらの容量が充放電される。容量特性のモデル化は、カーブトレーサーなどを用いて各容量の電圧依存性を測定し、測定結果に基づいて行う。

図1 SiCパワーMOSFETの単位セル構造と等価回路図
(出所:奈良先端科学技術大学院大学)
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 ゲート-ソース間容量Cgsは、酸化膜容量とチャネル界面に形成されるP型MOS構造(メタル-酸化膜-P+領域)におけるMOS容量の直列容量としてモデル化できる。MOS容量は電流特性と同様に、表面ポテンシャルを導出した後チャネル界面に湧き出す電荷を求めることで、この容量のゲート-ソース間電圧Vgs依存性をモデル化できる。しかし、他のCds、Cgdと比べて電圧依存性が非常に小さいことから、シミュレーション計算時間を考慮して固定値としてモデル化されることが多い。

 続いて、ドレイン-ソース間容量Cdsは、ドレイン端子とソース端子の間に存在するPN接合で生じる空乏層容量が主成分である。理想的には、PN接合容量は両端子間にかかる電圧(Vds)に対して1/2乗で減衰することが知られている。

 ゲート-ドレイン間容量Cgdはゲート-ソース間容量Cgsと同様に、酸化膜容量とMOS容量の直列容量である。ただし、Cgsと異なり、ゲート酸化膜直下のJFET領域におけるN型MOS構造(メタル-酸化膜-N-エピ領域)によるMOS容量である。CgdはCgs、Cdsと比べて電圧依存性が強く、スイッチング動作中にゲート入力電圧が平坦となる時間であるプラトー期間を決めるため、スイッチング特性に大きく影響する。

 パワーMOSFETのデータシートに記載されている容量特性の一般的な記載を、図2に示す。上述のように、Cgsはほぼ一定値であり、CdsはVdsに対して1/2乗で減衰している。ここで注目したいのは、Cgd特性はVgs=0Vとした場合のVds依存性のみが記載されている点である。パワーMOSFETの標準なターンオフ動作は、Vds=0 VかつVgs=VGS(VGSはオン時のVgs値)から開始し、Vgs=0 VかつVds=VDS(VDSはオフ時のVds値)に遷移する。従って、データシートにはターンオフ動作開始時の電圧条件における容量値は記載されていない。このため、ターンオフ動作の遷移を予測することは困難である。

 そこで我々の研究グループは、すべての動作領域を考慮可能なCgdの測定手法を考案し、そのモデル化手法を提案した。

図2 データシートにおけるパワーMOSFETの容量特性の記載例
(出所:奈良先端科学技術大学院大学)

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