我が国は本当に災害の多い国です。記憶に新しい、激甚災害に指定されたものを数えますと、東日本大震災から2018年の台風19・20・21号、北海道胆振東部地震まで、およそ30もの大規模災害に襲われました。

 災害の種類も多く、台風や竜巻、豪雨、地震、津波、大火、山火事、火山の噴火、地滑り、土砂崩れなど、災害のオンパレードと言っていいほど毎年いくつもの大災害が発生して、多くの命が失われているのです。

 海外では、戦争という災害(人災?)はありますが、天災としての災害がこれほど多い国はほとんどありません。

 また、災害ではありませんが、古くは「火事とけんかは江戸の華」というぐらい江戸の町では大火事が頻発したのですから、不謹慎な言い方ですが、この国は災害が当たり前になっているのかもしれません。

 もちろん、災害を未然に防ぐために多くの予算が計上され、大津波から町を守るための大堤防をはじめ、土石流や土砂崩れを未然に防ぐ砂防ダムや補強工事など、ありとあらゆる対策が講じられてきたのです。でも、それをあざ笑うように大規模災害は発生してきました。

 あえて誤解を恐れずに申し上げると、これだけ大災害が起こるのですから、例えば津波対策などは大堤防を造るよりも、津波の襲来が分かったらとにかく避難するという人的対応に注力した方がいいのではないかと思うのですが……。

 しかし、大津波に備えた大堤防も、すぐに土砂で満杯になってしまう砂防ダムも造られ続けているのが現状です。

 東日本大震災の際、津波で大きな被害を受けた三陸海岸で旅館を経営している女将が話題になったことがありました。風光明媚(ふうこうめいび)な海岸に大堤防を造ったら海が見えなくなってしまうと、建設に体を張って反対し、そのままにさせたというのです。

 その女将は、私の古くからの知人です。実は、女将自身も津波に飲み込まれ、流された裏山の中腹で、いち早く裏山に避難していた旅館の従業員に助けられたという、奇跡的な経験をしていました。そんな経験もあるのに、堤防よりも景観が大事と反対したのです。

 この名物女将に、私は共感するところが多いのです。

 震災後、励ましたくて女将の元を何回か訪れていたのですが、そのうちに「慰めはもういいです」と、自分たちの力で頑張っていることを強調されるようになりました。

 さらに「あの体験で、とにかく何をおいても高い所に逃げることができれば命を落とすことはないと分かった。物で備えるよりも行動で備えることが大事なのです」と言われたのです。

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