上司からのコーチングが“成長実感”を促す

 そもそも“エンジニア”の仕事というのは、営業やマーケティングなどに比べると自らの“成長”を実感しにくい仕事と言えます。なぜなら、その成果が見えづらく、定量的に評価することが難しいからです。さらに、例えば研究・開発系の仕事であれば、目に見える成果が出るまでに相当な時間を要します。そして、膨大な時間を費やしたプロジェクトであっても“失敗”という結果に終わることもしばしばです。エンジニアは、日々の仕事の中で成功体験や成長実感を得るのが難しいのです。

 そこで、チームを率いるエンジニアだからこそ手にしておきたいのが“コーチング”と呼ばれるスキルです。このコーチングは、端的に言えば、部下に仕事のやり方・進め方を“教えるスキル(ティーチング)”ではなく、部下に気づきを促す適切な“質問”を通じて“部下が自分で適切な答えを見つけ出すためのお手伝いをする”というもの。

 例えば、「開発がうまく進まない」と困っている部下に、このような質問を展開していくのがコーチングです。

上司:A君、例の開発プロジェクトはうまく進んでいないのか……。まあ、新規プロジェクトは、誰がやってもトラブルになるものだよ。ちなみに、理想的な状態が10点満点だとしたら、今は何点くらいなのかな?

部下:何点くらい……ですか……。そうですね……6点くらいでしょうか……。

上司:そうか、もう6点までできているんだね。ちなみに、6点にたどり着くまでにA君はどんな工夫をしてきたのかな?

部下:工夫……ですか? そうですね、自分なりにXXXとYYYだけには気をつけて開発を続けてきました。

上司:A君の工夫があったからこそ、ここまで開発を進めてこられたんだね。もし、あと1点でもいいから10点満点に近づけようとしたとき、A君が今までやってきた工夫はどう生かせそうなのかな?

部下:生かす……ですか? そうですね、XXXを今よりも細かく行えば、トラブルにつながるようなミスは減らせると思います。

上司:そうだね。A君の見解の通りだ。私もそう思うよ。ぜひ、その取り組みを強化してほしい。

部下:は、はい! 分かりました!

上司:よろしく頼むよ! あ、そうそう、A君、ちなみに、あえてもう1つ挙げるとしたら、他にもできそうな工夫はあるかな?

 このように、上司の質問をヒントにしつつも、部下にとっては“自分で最適解を見つけられた!”という実感が得られるので、成長実感が手に入りやすいと言われています。

 さらに、まだ目に見える成果が出ていなくても“うまくできていること”や“順調に進んでいること”を言葉にして伝える(フィードバック)ことで、部下のさらなるモチベーションアップも期待できるのです。

 ここまで読むと“コーチングって素晴らしい!”と感じるかもしれませんが、実は多くのマネジメント層がその使い方を間違えて失敗しています。