知財重視の経営戦略「IPランドスケープ」と、そのIPランドスケープの実践ツール「知財情報戦略」が日本企業の注目を集めている。こうした中、知財情報戦略を実践しやすくした「IPランドスケープ2.0」を提唱するのが、知財情報戦略の第一人者である山内明氏(三井物産戦略研究所技術・イノベーション情報部知的財産室室長)だ。実践すれば、経営陣への戦略提言の質が格段に高まる。その理由を、IPランドスケープ2.0の考案者であり、「日経 xTECHラーニング」で「IPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略」(2019年4月18日)の講師を務める同氏に聞いた。(聞き手は近岡 裕)

「IPランドスケープ」が知財分野で大きな注目を集めていると聞きます。どれくらいのインパクトがあるのでしょうか。

山内氏:2017年7月17日付の日経新聞朝刊の法務面1)でIPランドスケープが取り上げられ、私のインタービュー内容が掲載されたところ、さまざまな企業から数多くの問い合わせを受けました。従来の弊講座を通じた問い合わせでは知財部門担当者クラスによる自発的なものが大半でした。ところが、この記事をきっかけに事業部門や研究開発部門などの非知財部門からの問い合わせが急増しました。また、知財部門・非知財部門を問わず、部長クラス以上からの問い合わせが増えたのです。

 このことから、IPランドスケープはさまざまな企業で注目されており、「知財分野」のみならず、その枠を超えて話題になっていると言えます。少し大げさに表現している部分もあるかもしれませんが、問い合わせの中には「経営幹部から我が社のIPランドスケープについて問われて窮しています」という意見も散見され、こうした生の声からも、相当のインパクトがあると考えられます。

改めて、IPランドスケープとはどのようなもので、なぜ注目されているのでしょうか。

山内氏:IPランドスケープとは、欧米流の広義で言えば、日本が10年以上前に掲げた「知財経営」に相当します。知財経営とは、事業部門と研究開発部門、および知財部門が三位一体となり、知財を軸として戦略を策定して実行するものです。ところが、「日本における知財経営の実践企業は?」というと、極めて少ないというのが現実です。例えば、日本企業の大半は、特許出願には積極的なものの、特許情報分析は出願の付随業務に過ぎず、全社的な戦略策定、すなわち知財経営の実践には遠く及びません。

 しかし、この現状を前向きに捉えれば、知財経営への伸び代が大きいことに他なりません。一足飛びには無理だとしても、一歩ずつでも進めていけば、知財経営の実践は時間の問題といえます。大事なのは、確実に一歩を踏み出すこと。そして、そのための手法を身に付けることです。ここで登場するのが「狭義のIPランドスケープ」です。

 2019年3月27日に日経新聞社から出版された『IPランドスケープ経営戦略』2)によれば、狭義のIPランドスケープとは、知財を生かした経営を可能にする「知財の分析手法」です。具体的には、特許情報のデータベースや分析ツールを使いこなして戦略提言を図るもので、非特許情報も補完しながら仮説検証を繰り返し、これにより具体性と信憑性を高めていきます。この点で、従来型の特許調査や特許マッピングとは大きく異なります。

 この狭義のIPランドスケープのスキルを身に付けた知財部担当者であれば、1人でも取り組むことが可能であり、完成した戦略提言レポートによれば、読み手である事業部門や研究開発部門に対し、警鐘を鳴らしたり背中を押したりするなど、具体的なアクションを促して、確実な一歩を踏み出すことができます。