だから、失敗する

ユーザーの視点に立つとAIは難解なイメージがあります。そのためか、AIには過大な期待と実力との間に大きなギャップがあるようです。

速水氏:そうしたギャップがある点は、今回もこれまでのAIブームと同じです。過去においても、多くの人がAIに対して素晴らしい未来が急速にやって来るという夢を見ましたが、それは現実になりませんでした。その意味では、今でも実現していません。一般の人がAIに期待する、例えば文章の意味を理解できたり、人間と同じようなことを何でもこなせたりといったレベルには達していないのです。

 AIの技術は着実に進歩しており、その速さは過去をはるかに上回る。でも、過大な夢を描くほどではないというのが、正しい表現です。

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(写真:日経 xTECH)

では、AIの実力値、すなわちAIにどこまで期待できるのでしょうか。

速水氏:AIにとって、文章の意味を理解できる水準に達するまでの道のりはものすごく遠いと言えます。しかし、課題を設定し、データを集めて、モデルを学習させる。そして、使う──。このサイクルを設定すれば、かなりのことができて、さまざまな仕事を自動的にこなすことが可能です。従って、今後、日常の仕事の多くがどんどんAIに置き換わっていくことは間違いありません。

 既にそうした変化を私は実感しています。足元では、日本の産業界で深刻な問題になっている人手不足がAI活用の追い風になっています。企業は人材が限られる中で、単純作業をできる限り自動化し、より付加価値の高い仕事に人員を配置しようとしています。ここで、一層の自動化や効率化を進めるために、AI活用に懸命になっているのです。

しかし、業務のどこまでをAIで置き換えることができ、どこから置き換えられないのかは、初心者にはよく分からないのではないでしょうか。

速水氏:確かに、AIでできることと、できないことの見極めは意外に難しい。その意味で、2018年は多くの企業がAIにトライした年でした。工場の検査や開発プロセス、生産管理などでAIが使えるかどうかを試す企業が多かったのです。まずは、AIを導入してみようという段階でした。

 その結果は、ケース・バイ・ケース。うまくいっている企業もありますが、失敗している企業も結構あるようです。中には、人も資金も投入し、自信を持って取り組んだものの、うまくいかなった企業もあります。

 失敗する企業にはいくつかの典型的なパターンがあります。1つは、そもそもAIで解決するには難しい、ずっと未解決だった問題を解決したい課題に設定してしまうことです。私はこれを「野望」と呼んでいます。ありがちなのは、その企業の主要製品の性能を表す数値を目標に設定して、それをAIによって高めようとするケースです。それができれば、競合に対して差異化できるからです。それは構わないのですが、「AIなら何でもできる」「AIは万能だ」と過大に期待すると、失敗してしまうのです。

 もう1つのパターンは、経営陣などが「とにかくAIを買ってこい」と指示するケースです。例えば、大手企業がIT企業や関連会社などに「こういうものが欲しいから持ってきてほしい」と依頼する。この場合は、大手企業の方に新しい技術を分かっている人がいない上に、依頼される側も大手企業の業務を詳しく把握しているとは限りません。その結果、失敗で終わることになるのです。