自動車のパワートレーンは今後、どのように動いていくのか。環境規制の強化に各国の政策、さらに独フォルクスワーゲン(Volkswagen)などが起こした排出ガス不正問題の影響が絡み、パワートレーンの先行きは一層見えにくくなっている。関連する部品や材料メーカーは事業戦略をどのように見極めたらよいのか。「技術者塾」において「事業戦略を見極める 世界の自動車用パワートレーンの最新・将来技術と規制動向」(2018年12月13日)の講座を持つK&Kテクノリサーチ代表でワールドテック講師(元デンソー)の加藤克司氏に聞いた。その後編。(聞き手は近岡 裕=日経 xTECH)

パワートレーン 自動車のエンジンなどの原動機が発生する回転力を駆動輪へと伝える役割を担う装置類。エンジンやクラッチ、トランスミッション(変速機)、プロペラシャフトなどを含む動力伝達装置の総称である。

元デンソー K&Kテクノリサーチ代表 ワールドテック講師の加藤 克司 氏
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排出ガス不正問題を起こしたフォルクスワーゲン(Volkswagen、以下VW)のお膝元であるドイツは、今後のパワートレーンについてどのように考えているのでしょうか。2018年9月には独ポルシェ(Porsche)がディーゼルエンジン車の販売から撤退すると宣言しました。今後はハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)にシフトするとのことです。

加藤氏:Porscheの動きにドイツの他の主要な自動車メーカー、すなわちVWやビーエムダブリュー(BMW)、ダイムラー(Daimler)が追随することはないでしょう。総じて、ドイツはディーゼルエンジンの開発を諦めてはいません。

 なぜなら、ディーゼルエンジンのコア技術や資産を持っているからです。実際、少なくともこれら3社はディーゼルエンジンの開発を続けています。Porscheはディーゼルエンジン車の割合が少なく(2017年は12%)、経営に与える影響が小さいという事情があっての判断です。

PorscheのEV「Taycan」
2019年に市場投入する計画。同社が販売する初めてのEVとなる。(出所:Porsche)
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 面白い話があります。そもそも、エンジン専用車の販売を禁止するという決議案を採択し、エンジン専用車の規制で先駆けたのはドイツです。フランスと英国のいわゆる「エンジン2040年問題」の発表はこれを受けたものでした。ところが、その後の2017年9月にドイツ首相のメルケル氏は、「ディーゼルエンジン車の改良とEVの開発を同時に進める必要がある」と発表しました。

 この理由は、ディーゼルエンジン車を禁止すると国内の経済に与える影響が大きいからです。EVだけでは、ドイツの自動車メーカーが既存の資産を活用できなくなります。おまけに、ドイツにはエンジン関連の仕事に従事する人が約60万人いると言われています。こうした事情を踏まえると、ドイツはディーゼルエンジン車を捨てるわけにはいかないのです。

 とはいえ、さすがにドイツも今後はディーゼルエンジン車を開発の主軸に据えることはできないでしょう。ディーゼルエンジン車の販売は、排出ガス不正問題が発覚する前は人気だった欧州市場でも急落しています。では、ドイツが何の開発に力を入れているかと言えば、プラグインハイブリッド車(PHEV)とEV、そして48V電源の簡易ハイブリッドシステムを搭載した48VマイルドHEV(48V簡易HEV)です。