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 ものづくりとコトづくりの両立は、製造業にとって重要課題の1つである。そこで注目されているのが「触感」だ。人が何かに触れる際に必ず生じる触感は、多くの「もの」「コト」と関連を持つ。しかし、触感を定量化する方法や、体系的な触感の設計手法はまだ確立されておらず、分からないことが多い。触感やその評価・設計の重要性ついて、名古屋工業大学 大学院工学研究科 電気・機械工学専攻 准教授の田中由浩氏に聞いた。

製品開発において、触感に注目する事例が増えています。

 製品やサービスの差異化や付加価値につながる要素として、従来の機能性追求に加え、感性や体験に訴えることが求められるようになっています。

 触感は、触ることで対象を認知する感覚です。対象の手触りだけでなく、物体を操作したときの感覚や、全身で得られる体感など、人が何かに触れる際に触感は必ず生じます。多くの「もの」「コト」と関連を持つことから、その活用が期待されています。

 しかし、触感の知覚原理はまだ十分に明らかになっていません。試行錯誤的なアプローチが多く、どのようなことが実現可能かという課題設定も困難です。これまでの製品と比較したり、狙い通りになっているか検証したりするためには、触感を数値化して記録し、客観的に評価することが必要です。また、課題設定を行うためには、触感についての基礎的理解と活用の事例や発展可能性を知る必要があります。

触感を狙い通りに設計できるようになると、どのようなメリットがあるのですか。

 製品のブランディングにつながると考えています。多くの製品において、質の高い触感は求められていると思いますが、その質は単に「心地良い/快適」というのではなく、「どのように心地よいか/快適か」を説明できることが重要だと考えています。

 心地よいという感覚は多様ですが、この感覚を説明をできることが“狙った触感設計”です。これが、類似製品との差異化を図り、製品の価値を保証し、関連する一連の製品のイメージにつながると私は考えます。

 色には様々な種類がありますが、ユーザーはその違いを理解し、好みを持っています。これには、基礎科学や技術開発の発展が大いに貢献していると思います。これに対して、触感はどうでしょうか。ユーザーは様々な触感の違いを体感では理解しているかもしれません。しかし、その違いを表現することは難しく、またその表現のためのボキャブラリーも少ない状況です。

 今後、基礎科学の探求と技術開発が進み、様々な良い触感が明示され、付与されていけば、製品やサービスの質は高まり、個性が生まれ、良い意味での競争が活発になると想像しています。