クルマの自動運転やドローン、ロボットといった移動システムの発展や、高度な地理空間情報を活用した位置情報ビジネスの創出が期待されている。そこで重要性が高まっているのが、GNSS(衛星測位システム)による高精度の測位技術だ。技術は発展途上で、解決すべき課題も多くある。GNSSによる高精度測位技術の課題を解決し、移動システムや位置情報の新ビジネスを開拓していくためには何が重要か。この分野に詳しい立命館大学 理工学部 電気電子工学科 教授の久保幸弘氏に聞いた。

GNSSによる高精度測位技術の開発状況は。

久保氏:GNSS(衛星測位システム)は測位の要といえる技術となっています。我が国でも、QZSS(準天頂衛星システム)の整備が進められ、センチメートル級の測位が可能となる中、クルマの自動運転やドローン、農業、建設分野、ロボットなど、自律的な移動システムへの活用の拡大と、高度な地理空間情報を活用した位置情報ビジネスの創出が期待されています。このような中で、高精度測位技術やその応用分野ではまだまだ解決すべき課題があると思っています。

 各国のGNSSの整備が進み、マルチGNSS受信機が普及してくると、今以上に「位置情報の利活用」を行う技術が重要になり、新たな利用方法やシステムの開発が進むでしょう。また、衛星測位システムは単に位置情報を利用するユーザー視点からの重要性だけでなく、国のインフラとしての重要性も併せ持つものです。そのため、GNSS分野の研究開発は今後ますますその重要性を増してくると考えています。

GNSSによる高精度測位技術の開発のキーポイントは。

久保氏:GNSS測位が高精度化し、それを活用したさまざまな製品・サービスが提供されてくるでしょう。また、各種のセンサーや画像情報などとGNSSをフュージョンし、互いの欠点を補い合うようなシステムが主流になってくると思います。それは、単に精度を上げるということだけでなく、システムの信頼性を上げることになります。また、システムの信頼性を正確に評価・把握しながらシステムを利用するという考え方が、安心・安全に関わる分野で測位技術を利活用する際に必要になってくると考えています。

 どんな技術開発にもいえることですが、このような視点で高精度測位技術やその応用について開発を行うには、開発対象のシステムを構成するGNSSや各種センサー、センサーフュージョンのアルゴリズムをブラックボックスとして扱わないことが重要だと考えています。

エンジニア向けセミナーでの教育活動にも積極的ですが、そこで心掛けていることは。

久保氏:例えばこの9月7日に講演するセミナーでは、GNSS測位そのものと、センサーフュージョンや屋内測位への展開としてドローンの開発、屋内自律移動ロボットにおけるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)についてお話しします。いずれの話でも、原理・原則を大切にして、GNSSやセンサーフュージョンをブラックボックスとして扱ってしまわないための基礎知識が習得できるようにしたいと思っています。

 GNSS測位の活用や、センサーフュージョン、SLAMを応用したシステム開発のための基礎を習得してもらえるように、努めています。これらは、モデリング、推定、制御といった内容で絡み合っていますが、それぞれの理解や活用の勘どころを紹介していくことで、分かりやすく解説します。GNSS測位やセンサーフュージョン、SLAMに関連した基礎知識を身に付け、今後の開発に活かしていきたい方や、これらを応用したシステム開発を始めようとしている方に役立つ内容を心掛けています。