[画像のクリックで拡大表示]
仙波 健 氏=京都市産業技術研究所高分子系チームチームリーダー、博士(学術)

セルロースナノファイバー(CNF)の実用化に向けた開発が加速している。再生産可能な究極の「グリーン材料」であることに加えて、木材から採れることから将来的な低コスト化の可能性も開発を後押ししている。「技術者塾」で「ビジネスチャンスを逃すな! セルロースナノファイバーの最新動向」の講座の講師を務める1人、仙波 健氏(京都市産業技術研究所高分子系チームチームリーダー、博士)に、CNFが期待される理由や最新動向を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

基本的なことから伺います。セルロースナノファイバー(CNF)とは何でしょうか。

仙波氏:植物の主成分であるセルロースから抽出した繊維状の材料のことです。「ナノファイバー」という名前の通り、直径がnmのごくごく細い繊維です。具体的には、数~数十nmで、長さが0.5~数μm程度です。木材などを化学的、あるいは機械的に処理してセルロースを抽出し、細かくほぐして製造します。

CNFは新材料の中でも、特に注目度が高いようです。なぜでしょうか。

仙波氏:まずはやはり、環境負荷の軽減に効くからでしょう。CNFは木材などから採れる、天然由来の「グリーン材料」です。化石燃料とは異なり、計画的に植林などを行うことで再生産でき、枯渇の心配がありません。つまり、持続可能性がある。そのため、顧客に与える印象がすこぶる高いのです。

 CNFの実用開発に力を入れている企業は、どこも環境問題に関して先を見ています。「SDGs」という言葉を知っていますか? 2015年9月に国連が採択した「持続可能な開発目標」のことです。持続可能性が低いものは取り引きを断られるなど、将来的にビジネスに影響を与える可能性があります。日本企業ではあまり認知されていないようですが、環境意識の高い欧州企業を中心にSDGsの考えが浸透しつつあります。

 事実、欧州では家電製品に対してガラス繊維強化樹脂の使用を規制する動きが見られます。ガラス繊維強化樹脂はリサイクルができません。燃やして熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルにも対応できない。これに対し、CNFは燃やせますし、マテリアルリサイクルができるかもしれません。

 いずれにせよ、CNFであれば、環境に関するさまざまな規制を乗り越えられる可能性があるのです。

 しかし、営利を追求する使命を負う企業がそれ以上に期待しているものがあります。それは、低コストの可能性です。まず、CNFは木材など植物から採れるため、原料費が安くなる可能性があります。加えて、低コストな製造プロセスが開発されています。例えば、CNFを強化材に使った樹脂の複合材料(CNF強化樹脂)を連続的に製造するプロセス「京都プロセス」などがあります。工程がシンプルで製造コストを下げられる可能性があるのです。

 環境負荷が低く、持続可能性があって、低コストまで見込める。企業がCNFに注目する理由が分かると思います。