トヨタ、グーグル、VWのAI論文を分析してみた

世界のAIの研究動向はどうなっているのでしょうか。

恒吉氏:世界のAI関連のトピックを見ると、AIなのでやはり中心は「コンピューターサイエンス」ですが、興味深いことに「人の検知」や「医療」など学際的に広がっていることが分かります。医療分野では、「創薬」や「DNA」などでもAIが使われてくるのが見えてきます。

 プロミネンス(注目度)の高いもので、ボリュームも大きいものには、自動推奨(レコメンダーシステム)があります。「自然言語処理」も注目度の高いトピックの1つです。

 では、企業単位でどのようなAI研究が進んでいるかを調べて見ましょう。米グーグル(Google)を例に取ってみます。ここで、同社のAI関連の論文を視覚化しましょう。横軸にプロミネンス(注目度)、縦軸にインパクト(FWCI)、そして「●(丸)」の直径の大きさを論文の多さとし、グラフ化したのが図2です。

図2●GoogleのAI関連の論文を調べた。選択と集中が進んでいると推測できる。
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 これを見ると、Googleはプロミネンスが高く、かつインパクトを出しているものが突出しています。ここから、同社は研究テーマを取捨選択し、ホットなエリアに研究のリソースやボリュームを注いでいるのだろうと推測できます。そして、そのプロミネンスもインパクトも高い研究トピックとは、「言語処理、自然言語処理」や「レコメンダーシステム」などがありました。

 同じくAI関連で、ある日本企業を調べると、Googleとは違ってプロミネンスとインパクトが共に超高値であるものは見られず、プロミネンスの低いものから高いものまでまんべんなく論文を出しています。Googleと比べると研究の選択と集中が行われていないか、世界のトレンドという観点からは行われていないのではないかと推測されます。

 では、再びトヨタ自動車のAI関連を調べてみましょう。論文の本数はGoogleに比べて少ないのですが、結構、プロミネンスが高い研究テーマを手掛けています(図3)。つまり、研究のメリハリを利かせていることが分かります。

図3●トヨタ自動車のAI関連の論文を調べた。プロミネンス(注目度)の高い研究テーマを手掛けていることが分かる。
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 ただ、Volkswagenを調べると、図4のように、よりメリハリを利かせていることがグラフ上に見えてきます。

図4●VolkswagenのAI関連の論文。トヨタ自動車と比べるとさらに研究テーマの選択と集中が進んでいることが分かる。
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 このように、SciValを使えば、研究においてどの企業がどの辺りを攻めているかが一目瞭然です。そのため、例えば経営層から「AIを進めよ」と命じられたときに、自社の対応が十分かどうかを、他社と比較して判断することができます。すなわち、投資が十分か、自社のポジションはどこか、テーマは良いか、研究リソースに問題はないか、注目度の高い領域はどこか、どこと組んで共同研究を進めるか、もっと積極的に攻めるか、それとも、もう遅いと判断するか──といった判断を行う材料を提供できるのです。

 大切なのは、判断に至るスピードアップです。SciValは人間による判断を加速させる“エンジン”として機能するツールなのです。