世界の研究のトップトレンドとは?

もっとイメージしやすいように、事例を挙げながら具体的に説明してもらえませんか。

恒吉氏:では、エルゼビア(本社オランダ)が開発した研究分析ツール「SciVal(サイバル)」を例に説明しましょう。これは、世界の約8500の研究機関と約220の国・地域の研究から客観的なデータを簡単に取得できるツールです。データソースには、世界最大規模の抄録・引用文献データベース「Scopus(スコーパス)」を使います。

 SciValを使って世界の研究トレンドを調べるとします。まず、約4500万本ある論文(英語で書かれた論文)を約10万の「トピック」に分類します。トピックとは、引用関係を見てセグメンテーションした塊(グループ)のことです。そして、トピックの中から最近のプロミネンス(注目度)が高いトピックを抽出することで、世界の今の研究トレンドが分かります。

 プロミネンスが高いトピックを実際に調べてみると、「ソーラーセル」「ゲノムRNA」「キャパシター」「グラフェン」「酸化マンガン」「電極」といったキーワードを持つトピックが出てきます。これらが現在の世界の研究においてトップトレンドであることが分かります。

 文献検索はどこでもできますが、全体を俯瞰し、トピックを洗い出して、グルーピングできるのがSciValの特徴です。人間ではとても引用関係を詳細に追うことはできません。従来の文献検索ツールのみを使って手作業で行うのは不可能と言っても構わないでしょう。

 SciValではさらに、各トピックに対して文献数や「インパクト」が分かります。インパクトとは、論文の重要度の代替指標です。SciValではField-Weighted Citation Impact (FWCI)を使っています。他の論文からよく引用されている論文は重要性が高いとみなし、その重要性を数値で表します。具体的には、世界平均を1とし、1よりも大きければ重要度が高いと評価します。例えば、ソーラーセル関連のあるトピックの2012~2018年の文献数は7589本で、インパクトは5.04です。

 「プロミネンス」も分かります。これは注目度の代替指標です。3つの要素を組み合わせて作っています。1つは被引用数(直近の文献)、もう1つは閲覧数(同)、そして最後の1つが評価の高いジャーナルに載っているかどうか、です。これら3つを組み合わせ、トップ何%以内にあるかを指数化したものがプロミネンスです。これにより、最近の注目度合いが分かります。

 こうしてSciValで論文情報から意味や価値を見いだします。ただし、これらの指標を宝と見るかどうかは、最終的には人の判断になるというわけです。