392.5m。今回紹介する、中国・深センに完成した「華潤グループ本社ビル」の高さだ。 米国に本部を置く国際NPOの高層ビル・都市居住協議会(CTBUH)によれば、これは世界27位である。日本一高い「あべのハルカス」は300mで144位だ。世界では300m超級の高層ビルはもう珍しくないが、さらなる高さへの憧れも否定できない。特徴的な形態を保ちながら、広々とした無柱空間を実現した本プロジェクト、その構造設計はどのようなものだろうか?(菊地 雪代/アラップ)

 中国・深セン市にそびえ立つ華潤グループ本社ビル(China Resources Headquarters)。その特徴的なシルエットから、現地では「春笋(タケノコ)」との愛称がついている。設計用の地震荷重は小さいものの、毎年強烈な台風に見舞われるこの地において、柱形のない広々としたオフィス空間を実現した。強風時における居住性向上のために採用された技術、およびその設計プロセスについて解説する。

深セン湾対岸より望む華潤グループ本社ビル(China Resources Headquarters)(写真:©Shots Around)
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上部オフィス階のアトリウム。建物内部に柱形はなく、広々とした内部空間を実現している(写真:©Shots Around)
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ユニークな構造システム

 建物は円形平面で、中心に位置する鉄筋コンクリート(RC)造のコアと、外周に位置する56本の細い柱で支えられている。柱は低層部では傾いており、中層部で鉛直、そして上部で再び傾き、最終的に頂部に集まる。RCコアと多数の小さな柱による構造システムは、従来の超高層ビルで採用されている少数の巨大な柱による構造システムと比較すると、外周梁の柱間スパンが短くなり、柱・梁に生じる負担が軽減されるため、効率的な断面となる。柱断面が小さな部材になるため加工も容易になり、工期を短くできるなるため、コスト的にもメリットがある。

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56本にも及ぶ外周の柱は建物下部では斜めに立っているが、建物の頂部にて集まり、特徴的なフォルムを形づくる(写真:©ZC Studio)
RCコアと外周の柱の位置関係を示した構造モデル(資料:©Arup)
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