ノーベル賞受賞者の名を関した最先端の生物医学研究所が、英国・ロンドンで開設した。フランシス・クリック研究所(Francis Crick Institute=FCI)だ。クリック氏は英国を代表する科学者で、DNA(デオキシリボ核酸)の「二重らせん」構造を発見し、1962年にノーベル生理学・医学賞をワトソン氏、ウィルキンス氏と共同受賞した。

 FCIは約7億ポンド(約1008億円)をかけて設立された。設立費用のうちの大半は、英政府の医学研究会議(MRC)の拠出であり、英国が医学・薬学の研究で引き続き世界をリードしていくことを具現化した機関でもある。

フランシス・クリック研究所の内部。意匠設計は、HOK、PLP Architecture、BMJ Architectsの3社協働(写真:© Daniel Imade)
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 1250人の研究者と250人のスタッフが、2017年初頭からここでの業務を開始した。がん、脳卒中、感染症、神経疾患などの薬剤や治療法の開発や、病気のメカニズムの解明などに従事している。FCIは、若手研究者を10年ほどかけて育成することも計画している。

 近年、日本でもオープンイノベーション、インキュベーションなどの言葉を耳にすることが多いが、このFCIではどんな取り組みをしているのか?建築を通して参考になりそうなところを探ってみた。

FCI建物正面。優秀な研究者を集めるためには立地も重要だ(写真:© Paul Carstairs)
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優秀な研究者を集めるには敷地選定から

 アラップは2003年から、既存施設の調査などでこのプロジェクトに関ってきた。中でもFCIからの重要な要求事項の1つは、敷地選定だった。優秀な研究者を集めるためには、施設の立地条件も重要だとFCIは考えていたのである。交通アクセス、主要な病院や大学との近接などを考慮し、2008年に現在の敷地が選ばれた。セントパンクラスというロンドンの主要駅や大英図書館に隣接しており、近年再開発が進むキングスクロス地区内にある。

 もちろん、単に利便性というだけではなく、敷地の振動レベルや電磁波など、繊細な研究に影響を与える要素も調査され、決定に至った。

FCI建物正面。危険な菌なども扱う施設ではあるが、来場者も多く、意匠にも配慮した外観となっている(写真:©Paul Carstairs)
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