米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の防犯監視カメラ部門である「リング(Ring)」が、顔認識ソフトウエアと同社の拡大し続ける防犯カメラネットワークを使って、AIベースの「近隣監視リスト(ウオッチリスト)」を計画していたことが、「The Intercept」が調査した内部文書によって分かった。

 同計画の資料によればリングは、「疑わしい」と見なされる人物をリングオーナーのカメラが捉えた時、そのオーナーに警告が自動的に送られるというシームレスなシステムの構築を計画していた。このような警告は「不審行動警告(suspicious activity prompt)」機能と呼ばれていた。

「ご近所アプリ」で情報を共有

 誰が近隣監視リストにアクセスできるのか、また管理リストがどのように作成されるのかは不明だ。しかし我々が入手した文書は、何度も警察組織に言及している。そしてリングは米国中で警察との関係を築いており、監視リストが地方自治体によって使用される可能性を高めている。我々が調査した文書によれば、監視リストはリングが提供する「Neighbors(ご近所)」というアプリケーションから利用可能になるという。リングのカメラのオーナーはこのアプリを通じて、玄関や駐車場における安全上の脅威に関して近隣のオーナーと話し合える。

米アマゾン・ドット・コムが販売する監視カメラ付きドアベル「Ring」
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 リングの広報担当者であるヤッシー・シャフミリ(Yassi Shahmiri)氏はThe Interceptに対し「我々は記載されている機能を開発中でもなければ、使用してもいない。リングは顔認識技術を使用していない」と答えたが、それ以上の質問には答えなかった。

 2019年11月に報道による継続的な圧力と、マサチューセッツ州のエドワード・マーキー(Edward Markey)上院議員が送った質問リストによって、アマゾンはリングにとって顔認証が「検討はされたが、未実装の機能」だが「プライバシーやセキュリティー、ユーザーの管理を含めた思慮に富んだデザイン」が実現した場合に追加されるだろうと認めた。その「検討」の一部がどのようなものであったのか、今回の文書によって明らかになった。

法的な手続き無しに監視が横行する恐れ

 南カリフォルニアのアメリカ自由人権協会(ACLU)のモハンマド・タジサール(Mohammad Tajsar)は、リングが顔認識ベースの監視リストの計画に意欲的であることに関して、懸念を示した。タジサール弁護士は「警察や消費者にリングの機器を通じた『監視リスト』機能へのアクセス権を与えることは、『(進入禁止を示す)赤い線のデジタル版』を近隣地域に引くことになる。警官が疑い深い家主と協力して、富裕層の住む地域に入るのにふさわしくない、好ましくない人々のリストを機械に作らせることになる」と述べる。

 法学者は正当な手続きなしで無実の人々を逮捕する恐れがあるとして、長い間、米国内での政府による監視リストの使用を非難してきた。「企業が監視リストを作るようになると、危険性はさらに高まる」とタジサール弁護士は語る。連邦政府のブラックリストに関して「どうやって」と「なぜ」に対する答えを得ることは難しいが、アメリカのテック企業はさらに大きな不透明性を伴って活動している。「企業はしばしば、最も基本的な規制すら受けない環境で活動する。透明性がまったくなく、彼らの商品がどうやって作られ、そして使われるのかに関して、ほとんど監視の目がなく、そして間違いを正すための調整されたメカニズムがない環境だ」(タジサール弁護士)。

 リングはかつて、ネット接続可能なインターホン用カメラの製品群を過剰なほど用心深い人々向けに販売していたことで知られていた企業で、「民間による監視」の象徴になっていた。米ロサンゼルスに拠点があり現在はアマゾンの傘下となったリングは2019年、同社のゆるい内部セキュリティーと問題のある警察との関係、そして公共の治安維持活動と民間のエンジニアリングの間の境界が全体的に曖昧になっている問題に関する報道に揺れた。

 2019年にThe Interceptは、リングの顧客のカメラで撮影されたビデオ映像を警察が利用するために同社が作成した、特別なオンラインポータルサイトに関する動画を公開している。またリングのCEO(最高経営責任者)が同社による「我々の宅配物を盗み、私たちの家に強盗に入るクズ犯罪者たち」に対する戦いと呼ぶものに関する社内メールも一緒に公開している。

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