果たして提携だけで済むのか――。そう思わざるを得ないのは、ニコンとDMG森精機が新たに発表した提携だ。工作機械のIoT(Internet of Things)対応を急ぐDMG森精機にとって、ニコンの技術は喉から手が出るほど欲しい。もっと突っ込んだ策を検討していてもおかしくない。

提携の利はDMG森精機に大きい

 両社の提携は、2019年11月7日に両社がそれぞれ開催した決算説明会の場で明らかになった。その骨子は、以下の2つである。

・ニコンの計測技術および画像処理技術をDMG森精機の工作機械に提供し、より高度な工作機械を両社で開発
・ニコンの光加工機の販売にDMG森精機の販売網を活用

 決算に合わせて提携を発表した背景には、主にニコン側の事情がありそうだ。同社の業績はさえない。2019年度上期(同年4~9月)の連結決算は、売上高が前年度同期比13.3%減の2910億5200万円、営業利益が同42.9%減の175億400万円、純利益が同28.4%減の163億4300万円と、大幅な減収・減益。さらに、2019年度通期(同年4月~2020年3月)の業績を下方修正した。特に映像事業はミラーレス一眼カメラでの出遅れで低迷が続いており、良化の兆しも見えない。

 そこで、ニコンが成長戦略の柱として打ち出したのが光加工機である。その第1弾として、試作用途向け金属光造形機(金属3Dプリンター)の販売を2019年4月に開始。同年9月には、第2弾の金属除去加工機を展示会に参考出展した。第3弾、第4弾となる光加工機の開発も進めているという。DMG森精機との提携によって、ニコンはこれらの光加工機をDMG森精機のグローバルな販売網で展開できるようになる。

ニコンの金属3Dプリンター「Lasermeister 100A」
主に試作用途向け。素材は、同社指定のステンレス鋼(SUS316L)粉体だけが使える。価格は3000万円(税別)。(出所:ニコン)
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 一方、DMG森精機の業績は堅調だ。2019年度通期(同年1~12月)の連結決算は米中貿易摩擦の影響もあり、売上高こそ前年度比3.2%減の4850億円だが、営業利益は前年度比2.0%増の370億円を確保する見通しである。今回の提携によって、DMG森精機は自社の工作機械にニコンの計測技術や画像処理技術を活用する。DMG森精機代表取締役社長の森雅彦氏は「当社の工作機械にニコン製の非接触計測器などを搭載していく。ウィンウィンの関係を作りたい」と期待を寄せる。

 とはいえ、提携の内容をよくよく眺めれば、DMG森精機は“軒先を貸す”だけなのに対し、ニコンは虎の子の技術を差し出すというものになっており、利はDMG森精機に大きい。ニコンの光加工機は、DMG森精機の工作機械と競合するものではなく、むしろ補完関係といえる。例えば、DMG森精機も金属3Dプリンターを手掛けるが、同社の製品は量産用途向けであり、ニコンの製品とは用途も顧客層も異なる。窮地に陥っているニコンに救いの手を差し伸べることで、DMG森精機は工作機械のIoT対応に不可欠な技術を格安で獲得した格好だ。

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