米グーグルが自社開発の量子コンピューターで「量子超越性」を実証したとの発表と前後し、国内IT企業による「量子」関連事業への参入が相次いでいる。なかでも目立つのが、グーグルが開発する量子ゲート型マシンと比べて実応用で先行する量子アニーリングマシンや、「量子」に触発されつつも従来の半導体チップを使った古典アニーリングマシンによるPoC(概念実証)サービスだ。

 NECは自社開発のベクトルプロセッサー搭載拡張ボード「SX-Aurora TSUBASA」を使ったシミュレーテッドアニーリング演算を顧客企業の業務に生かすPoC(概念実証)サービスを2020年上期に始める。

 「メモリー容量が多く、メモリーバンド幅が広いというベクトルプロセッサーの特徴が、大規模なアニーリング計算で生きてくる」とNECの津村聡一システムプラットフォーム研究所長は語る。15人1カ月分のシフトを最適化する計算を解かせたところ、一般的なCPUでは1分かかるところを0.7~0.8秒で解いたという。

 同社は量子アニーリングマシンの独自開発も進めているが、つなぎの技術として古典アニーリングマシンによるPoCを通じて「アニーリングで解ける課題について類型化できるようにしたい」(津村研究所長)とする。

アニーリング普及へ最大の壁は「数理人材」

 NECを含め、国内大手IT企業はそろってアニーリングを有望市場と位置づける。組み合わせ最適化問題を高速に解くことで、配送ルート探索や倉庫内ピッキング作業の効率化、シフト管理、創薬などに応用できるとみる。

 富士通や日立製作所はアニーリングの演算を高速に実行する専用の半導体チップを開発済み。富士通は2019年9月、創薬ベンチャーのペプチドリームと中分子創薬に関する共同研究を始めたと発表した。東芝は「シミュレーテッド分岐マシン」と呼ぶ、組み合わせ最適化問題を解く独自のアルゴリズムを開発。アルゴリズムを実装した専用チップを開発中で、高速取引など金融分野への応用を目指している。

 ただし、アニーリングの普及に当たってはどの企業も1つの障壁に直面している。配送ルート探索など現実の問題を、アニーリングで高速に解ける計算モデル「イジングモデル」に落とし込める数理系人材の不足だ。

 アニーリングのPoCに当たっては、高度な数学を使いこなせる人材を数カ月張り付かせる必要があるとされる。ある業界関係者は「PoC1件で1000万円近くを要求されることもある」と明かす。

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