再生可能エネルギーの普及を支えてきた固定価格買取制度(FIT)の見直しが始まった。ドイツが先行するプレミアム制度(FIP)への移行が有力視されるが、FIPは単に賦課金の抑制が狙いではない。自由市場における再エネビジネスの姿が見えてくる。

(画像:PIXTA)

 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の見直し議論が始まっている。資源エネルギー庁は「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」を立ち上げ、9月18日に第1回会合を開催した。年内をめどに見直し案を取りまとめる予定だ。

 再エネの中で競争力があり、導入量も期待される太陽光や風力などは「プレミアム制度(FIP)」への移行が検討されており、有識者会議でも議論が進んでいる。しかし、多くの専門的な用語や概念が交錯し、意味合いや影響を理解するのは容易でない。

 FIT普及の立役者であるドイツでは、既に10年前にプレミアム制度の原型が登場し、時間をかけ、段階を踏んで制度改革を行ってきた。日本のFITはドイツを参考に設計した制度であり、今回のFIP(Feed in Premium)も同様にドイツを参考にする可能性が高い。ドイツの経験を振り返ることは、国内で検討が進むFIPへの理解を深めるうえで有効だろう。

 表1は、ドイツにおける再エネ支援制度の概要と経緯をまとめたものである。再エネ普及にはFITやFIPだけでなく、実は系統運用の改善や卸電力市場改革も大きな役割を果たしている。

支えは「FIP」「優先接続」「市場改革」
表1●ドイツの再エネ支援制度の概要とその推移(出所:各種資料より著者作成) 再エネ比率:総発電電力量に占める再エネ比率/FIT:Feed in Tariff/FIP:Feed in Premium/DM:Direct Marketing/GC:Gate Close/EEG:Erneuerbare Energien Gesetz(Renewable Energy Sources Act)
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市場経済と折り合い悪いFIT

 エネルギーの国産化やCO2フリー、技術力や競争力の向上など多くの便益をもたらす再エネは、欧州では優先的に開発すべきエネルギー源として包括的な支援施策がとられてきた。中でも、適正利潤を基に電力の買取価格を20年間保証するFITは、投資回収の確実性を高め、民間主導による設備形成に大きな役割を果たした。

 一方で、FIT制度は需給状況に関わらず電源の稼働を保証することから、需給から価格を決める市場機能の本質的な阻害要因となる。需給がひっ迫して市場価格が高くなっても発電量を増やすことはなく、逆に供給過剰で市場価格が安くなっても稼働を抑えることはない。

 再エネのシェアが大きくなると、つまり産業として成熟してくると、FITは市場機能を大きく歪めてしまう(注:市場は外部不経済を反映しないので、FITでCO2を出さない再エネを支援することは市場の歪みを是正する効果があるという指摘もある)。

 そのため、FITはどこかのステージで廃止し、市場と調和するシステムに改めることが不可避だ。これを「市場統合(Market-Integration)」と呼ぶ。

 その方法と時期が重要であり、誤ると再エネ普及を止めることになりかねない。ドイツなど再エネ先進国は「再エネ普及が止まっては元も子もなくなる」との認識の下に慎重に進めてきた。

 ドイツのエネルギー・環境政策は再エネ普及を柱に据えており、脱原発を決めた2000年には「再生可能エネルギー優先に関する法律」(EEG:Erneuerbare-Energien-Gesetz、Renewable Energy Sources Act)が施行され、FITが導入された。

 東日本大震災直後の2011年12月にはEEGを大改正し、再エネ普及や省エネ推進などの目標値やスケジュール、FIT改正、再エネの優先接続・優先給電が決まった。

 並行して2011年には市場改革を進めた。卸電力市場(当日市場)において短時間商品(15分商品)を投入したり、市場閉場時間を実需給の1時間前から45分前に短縮することで、風力や太陽光といった変動電源の需給調整を支援する仕組みも整備した。

 これらの施策が極めて有効に機能し、着実に再エネは普及してきた。輸出を含む総発電量(グロスベース)に占める再エネ比率は、2000年の6.6%から2018年は35.0%に高まり、国内電力消費に占める比率(ネットベース)は38.1%に達した。政府の目標は2020年35%だったが既にこれを上回っている。

再エネが政府目標を上回って増加
グラフ1●ドイツの総発電電力量の構成比推移(出所:Arbeitsgemeinschaft Energiebilanzen e.V, 2018.12.14)2018年は暫定値。輸出量を含むグロスベース。国内消費見合いのネットベースでは2018年の再エネ比率は38.1%
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