インターネット上での動画配信サービスが盛んになる中、現在より高画質な4K映像を配信したり、配信動画のビットレートを小さく抑えたりするために、次世代の映像符号化方式(動画コーデック)への関心が高まってきた。現在、インターネット上の動画配信サービスのほとんどが、2003年に国際標準化された「H.264/MPEG-4 AVC」をいまだに使用している。

 H.264で4K映像を配信しようとすると必要なビットレートが大きくなり、動画の再生が途切れ途切れになってしまうなどサービスの提供が難しい。H.264の後継として、国内の機器メーカーが中心になって開発したのが「H.265/HEVC」である。H.265は2013年に国際標準化されて、H.264からの移行が進むと思われていた時期も過去にはあったが、インターネットの動画配信サービスではほとんど使われていない。

 その背景には、特許権利者団体の乱立などによるH.265離れがある。今のところ視聴環境となるインターネットブラウザーの多くでH.265を再生できない。

 インターネット上で動画を配信する際は、クラウドサービスを使用する場合が多い。例えば、米ネットフリックス(Netflix)や英BBCなどが「Amazon Web Services(AWS)」を使用しているという。国内では、動画配信サービスを手掛けるU-NEXTやフジテレビジョン、北海道テレビ放送などがAWSを使用する。テレビ局においても動画のインターネット配信でのクラウドサービスの利用が進んでいる。

多くのメディア企業がAmazon Web Servicesを利用している
米アマゾンウェブサービス(Amazon Web Services)Enterprise StrategistのIshit Vachhrajani氏が「2019年国際放送機器展(Inter BEE 2019)」で講演した(撮影:日経 xTECH)
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 AWSや「Microsoft Azure」などのクラウドサービスを使って動画を配信する際は、視聴環境を優先して映像符号化方式が選ばれる。このため、どの映像符号化方式を採用するかの決定権が、これまでの映像機器メーカーから、クラウドサービス事業者へ移るかもしれない。すなわち、この先もクラウドサービスでは、視聴環境が整わないH.265に対応しない可能性がある。

AWSはAV1エンコーダーを2020年に実装予定か

 H.265に代わって動画配信サービスで利用が見込まれる映像符号化方式が、「AV1(AOMedia Video 1)」だ。AV1の開発には、米グーグル(Google)や米アップル(Apple)など、「GAFAM」と呼ばれる世界のIT企業大手が軒並み参画する。

 「2019年国際放送機器展(Inter BEE 2019)」(幕張メッセ、2019年11月13~15日)では、8K映像に注力する機器メーカーの多くが、H.265を採用した機器を出展していた。一方で、動画配信に用いるクラウドサービスを出展していたアマゾンウェブサービスジャパンや日本マイクロソフトのブースでは、H.265の姿はなかった。

 代わりにアマゾンウェブサービスジャパンは、AWS上でAV1にエンコードした映像とH.264映像を比較するデモを参考出展した。H.264と同じビットレートで大きく画質を向上できるとし、2020年には実用化するとみられる。同ブースでは、ソシオネクストとアイベックステクノロジーが、AWSを用いてリアルタイムにH.264コンテンツをAV1にエンコードして配信するデモを見せた。

アマゾンウェブサービスジャパンはAWSでAV1エンコードした動画(左)とH.264動画(右)を比較して見せた
(撮影:日経 xTECH)
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ソシオネクストとアイベックステクノロジーが出展したH.264からAV1へのリアルタイムエンコーダーのデモ
(撮影:日経 xTECH)
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