国内外でスタートアップに対する投資の拡大が続いている。ジャパンベンチャーリサーチによれば、2018年のスタートアップ資金調達額は過去10年で最高となる3848億円(前年比22%増)だ。米KPMGが2019年7月11日に発表したリポートによると、2019年第2四半期の世界のベンチャーキャピタル(VC)による投資額は527億ドル。「2018年の記録的な投資のレベルには及ばないが、2017年の投資レベルに匹敵する」(KPMG)。

 「ここ10年、世界的な低金利のためにベンチャー投資が旺盛になっていた。今後も活発なベンチャー投資は続くだろうが、少し雲行きが怪しいと見る人たちも増えてきた」。米国と日本をベースにベンチャー企業への出資や支援などを手がけるWiLの伊佐山元共同創業者兼CEO(最高経営責任者)は話す。

 伊佐山氏は米有力VCのDCMでパートナーを務め、シリコンバレーで初めての日本人ベンチャーキャピタリストと言われる。現地で約10年の投資経験があり、米国に幅広い人脈も持つ伝説的な存在だ。2013年にベンチャー企業への投資や育成、大企業との連携による新規事業の開発支援、次世代の起業家・リーダーとなる人材の育成を手がけるWiLを創業した。

 雲行きが怪しいと投資関係者が感じ始めているきっかけとして「シェアオフィスWeWorkを運営する米ウィーカンパニー(WeCompany)のバリュエーション(価値評価)の大幅な落ち込みや、上場した米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)やリフト(Lyft)の株価が下落していること」を挙げた。

WiLの伊佐山元共同創業者兼CEO(最高経営責任者)
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 銀行にカネを預けても利子があまりつかないため、リスク資産に対する投資への関心が高まった結果、VCにお金が集まるようになった。とはいえカネが集まったとしても、VCは審査基準を甘くしたり投資先をむやみに増やしたりしないので「いいベンチャー企業にある意味で異常なお金が集まるようになった」(伊佐山氏)。

 対象企業が本当に価値のある企業なら、集めたカネをさらなる成長につなげて猛スピードでユニコーン(推定企業価値10億ドル以上の未公開企業)やデカコーン(同100億ドル以上の未公開企業)となっていく。こうした循環ができれば理想的だ。一方、過剰な期待でバリュエーションが上がったものの、ある時「そこまでの価値はなかった」と投資家が気付いて評価を調整する場合もある。後者の代表例がウィーカンパニーだ。

「お金で時間や成長が買えるなら何をしてもいい」

 伊佐山氏は「ベンチャーに対する活発な投資はこれからも続く」とみる。しかし同時に「これから先もずっと晴天が続くわけではないだろうと、多くの人が感じ始めている」と言う。株式市場が低迷すれば、ベンチャー企業が計画通りに上場できず資金繰りが悪化する恐れがある。VC側にも資金回収が遅れる懸念が生じる。景気が減速した場合のプランB(次善策)についての議論が周囲で以前より増えているという。

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