インクジェット印刷を使った電子回路製造技術を手掛ける東大発ベンチャー、エレファンテック(旧AgIC)は、18億円の資金調達を実施したと発表した。第三者割当増資の形で行うもので、リードインベスターであるセイコーエプソンなど9社が出資した。セイコーエプソンはインクジェットプリンターの心臓部であるマイクロピエゾ技術を使ったプリントヘッドの応用先を探して協業先を求めており、インクジェット印刷を使った電子回路基板の量産に踏み切ろうとするエレファンテックの思惑と一致した。

資金調達に関する記者発表会を開催した
左から、タカハタプレシジョン取締役専務執行役員の片岡政人氏、三井化学代表取締役専務執行役員の松尾英喜氏、エレファンテック代表取締役社長の清水信哉氏、セイコーエプソン取締役常務執行役員最高技術責任者(CTO)の小川恭範氏、住友商事エレクトロニクス第二部長の植木紀有氏(撮影:日経 xTECH)
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出資する9社と協業における役割など
(スライド:エレファンテック、撮影:日経 xTECH)
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 エレファンテックの技術は、銀(Ag)インクによるインクジェット印刷を使って配線のシード層を形成し、無電解銅(Cu)めっきにより配線層を作るのが特徴。Cu箔からエッチングによって不要部分(非配線部分)を取り除く従来の方法に比べて、エッチングレジストのための版が不要で廃棄物が少なく環境負荷が低いという特徴があるとする。印刷技術のみで配線を形成する方法に比べると、配線の抵抗が低く、従来通りはんだによる部品実装が可能という利点を持つ。

低環境負荷をアピール
フレキシブル基板の製法について、エレファンテックのインクジェット印刷とめっきを組み合わせる方法と従来方法の比較。今回は環境負荷の低さを特に強調していた(スライド:エレファンテック、撮影:日経 xTECH)
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エレファンテックのフレキシブル基板
PETを基材とする「P-Flex PET」の片面フレキシブル基板サンプル(撮影:日経 xTECH)
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 同社では、すでにポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)を基材とするフレキシブル基板として実用化しており、月産最大1000m2に対応可能な本社工場での生産品を試作開発用途などに向けて提供している。版不要や省材料によるコスト低減と、部品の生産工程における環境負荷の低減を両立できる方法として、カメラなど一般の家電や電子機器で既存のフレキシブル基板の代替品として利用したいという大手企業数社からの需要があり、量産化を進めるために今回の資金調達と各社との協業に至ったとする。フレキシブル基板市場は現在1兆4000億円規模で、2030年ごろには2兆円規模に拡大すると見込む。既存のフレキシブル基板の代替品として普及させることで、2030年ごろにフレキシブル基板の主要な製造方法の1つとして食い込むことを目指す。

 今回の出資に参加している三井化学は、材料開発に加えて量産支援にも参加する。エレファンテックでは、インクジェットを使ったフレキシブル基板の大型量産実証拠点として、2020年9月に三井化学名古屋工場内に月産最大5万m2の工場を完工する予定で、研究開発を含めた装置設備等に8億円を投資するとしている。インフラや安全管理、量産管理といった面で三井化学の支援を受ける。2020年中の製品出荷を予定しており、40~50億円の売り上げを見込む。また、出資には世界規模のサプライチェーン構築に向けて協力するとして住友商事も参加している。同社は傘下に日系EMS大手のスミトロニクスを持っており、フレキシブル基板の代替品としての採用拡大につながると見込む。

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