「1kWh当たり100ドルまたは80ドル未満」(電池調査会社であるB3上級副社長の宮本丈司氏)。電気自動車(EV)のTCO(Total Cost of Ownership)が内燃機関(ICE)を動力源に使う既存車(ICE車)のそれと肩を並べるために求められるEV用電池パックの価格である。

 だが、EV用電池パックは当初の狙いほど低価格化が進展していない。米マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey&Company)シニアナレッジアナリストのニコロ・カンパニョーロ(Nicolo Campagnol)氏によれば、最も可能性の高いベースシナリオでは1kWh当たりの電池パックの価格は、2020年に165ドル、2025年に115ドル、2030年に90ドル。低価格化に向け、新たなアプローチが求められている。

3次元構造の炭素材料でバインダーレスに

 「高エネルギー密度のリチウムイオン電池(LIB)セルの1kW当たりの価格を少なくとも20%低減できる」――。2019年10月下旬に千葉県浦安市で開催された自動車用電池のシンポジウム「Advanced Automotive Battery Conference Asia 2019(AABC Asia 2019)」でこう強調したのが、米ナノラミック・ラボラトリーズ(Nanoramic Laboratories)の最高技術責任者(CTO)ニコロ・ブランビラ(Nicolo Brambilla)氏だ(図1)。

図1 米Nanoramic LaboratoriesのCTOのNicolo Brambilla氏
図1 米Nanoramic LaboratoriesのCTOのNicolo Brambilla氏
(撮影:日経 xTECH)
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 同氏によれば、同社ではLIBの電極から樹脂のバインダーをなくす新技術のための製造プロセスを開発している。通常、LIBの電極は、導電助剤となる炭素系の材料に加えて、樹脂のバインダーを混ぜることで電極の機械的強度を確保している。だが、樹脂のバインダーは電気的には絶縁体であり、電池のエネルギー密度を高めるにはマイナスだ。

 樹脂のバインダーをなくすのに同社が使うのが、3次元構造を有する炭素材料だ。同氏によれば、同炭素材料が活物質をしっかりと保持することから樹脂のバインダーを不要にできる上、同炭素材料が導電性に優れることから導電助剤を添加する必要がなくなる。電極合材の中の97~99.5%を活物質にすることが可能だという。

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