顧客データが社内の複数のシステムに散在していて、正確な情報を確認するのに時間がかかる――。多くの企業で起こりがちな問題だ。同様の課題を抱えていたアクサ生命保険はCRM(顧客関係管理)システムを刷新し、1人の顧客にまつわる情報を一元的に参照できるようにした。2019年9月に本格稼働を開始した。

 新システムの名称は「AXA cockpit 360」。個人と法人を合わせた約600万顧客、約1200万契約についての情報を格納する。ユーザーは営業やマーケティング、カスタマーサービスセンターの従業員など約7000人だ。

 アプリケーションにはセールスフォース・ドットコムの「Sales Cloud」を採用した。複数の既存システムのデータを統合するため、日本IBMのMDM(マスターデータ管理)製品を活用した。

 このシステムによって、社内の様々な部門の業務を効率化できたという。「お客さまの全ての情報がこのシステムで閲覧できるので、営業担当者が顧客を訪問する際の事前準備にかかる時間を大幅に短縮できた」と、今井隆営業戦略本部営業デジタル変革部長は言う。

 例えば個人顧客であれば、本人以外の家族構成、法人顧客であれば職場の情報や紹介関係などを参照できる。Webサイトやスマホアプリのアクセス履歴やコールセンターの対応履歴、営業活動の履歴も確認可能だ。当然、契約状況や給付金の支払い状況もわかる。

AXA cockpit 360で管理する情報
(アクサ生命保険の資料を基に日経 xTECH作成)
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 ただし、導入までの道のりは決して平たんではなかった。理由の1つは、アクサ生命で初めて本格的にアジャイル開発を取り入れたプロジェクトだったことだ。

 アクサ生命といえば、金融機関の中ではアジャイル開発の先進企業。IT部門の組織体制をアジャイル開発に向くように再編したことで知られるが、今回のCRMシステム構築プロジェクトは組織再編前の2016年に始まったもの。試行錯誤があった。

 もう1つが、ステークホルダー(利害関係者)が数多く存在したことだ。次々と寄せられる新しい要求に対処するために工夫を凝らした。ポイントは「世界地図」とチームへの権限委譲である。以下で詳しく見てみよう。

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