世界をリードする新しい生産技術を日本で生み出し、国内工場で展開した後、海外工場にどんどん横展(展開)していく──。筆者が知る限り、これがトヨタ自動車(以下、トヨタ)の基本方針だ。ところが、最近「おや?」と思う事例に直面した。金属を造形する3Dプリンター(以下、3Dプリンター)の実用化について、「海外の方が日本よりも積極的」という情報を得たからだ。

肉盛り溶接を超える

 トヨタの海外工場が3Dプリンターを実用化したのは、量産用アルミダイカスト金型の補修だ。ショット(成形)数が増えると金型が摩耗し、その部分がへこんで寸法精度が落ちてしまう。これを従来は肉盛り溶接で補修していた。ところが、肉盛り溶接では大きな問題があった。補修後の寿命が短いのだ。ショット数が、新規の金型のショット数に対して実に20.8%にまで落ちるという。

 そこで、トヨタの海外工場はパウダーノズル方式の3Dプリンターの使用に挑戦。工作機械メーカーの協力を得たり、試行錯誤や評価を繰り返したりしながら、ノウハウを積み上げて実用化に踏み切った。その結果、肉盛り溶接とは異なり、補修後の金型の寿命が回復。3Dプリンターで補修した後の金型のショット数は、新規の金型と同等になるという。これは、「3Dプリンターを使えば、補修した部分を母材と同じ強度にできるため」(工作機械メーカー)だ。補修部分の強度が低下する肉盛り溶接に対する優位性を、ショット数という形で見える化したことが、3Dプリンターの実用化につながったのだろう。

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量産用アルミダイカスト金型
トヨタの海外工場がこの金型の補修に3Dプリンターを採用した。日本に先駆けて実用化したとみられる。ある工作機械メーカーのパネル写真を撮影したもの。(写真:日経 xTECH)

「3Dプリンターは不要」という日本側の声

 日本では3Dプリンターの実用化が「欧米に比べて2、3年は遅れている」「周回遅れだ」といった声が工作機械メーカーから聞こえてくる。欧米では、いわゆるアディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing;付加造形)が、既に1つのメジャーな加工分野として確立しているが、日本では3Dプリンターが高額であることもあって、依然として様子見の状態の企業が多いという。

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