「我々は安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領が貿易交渉に入る前の早い段階から日米政府にデジタル貿易を対象に入れるよう求めてきた。実現したので歓迎している」。こう強調するのは米マイクロソフト(Microsoft)や米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)、米IBMといった米IT大手企業などが加盟するBSA | The Software Alliance(BSA | ザ・ソフトウェア・アライアンス、以下BSA)のアジア太平洋政策担当シニア・ディレクターであるジャレッド・ラグランド氏だ。

 ラグランド氏がデジタル貿易を対象にするよう求めていた貿易協定が「日米デジタル貿易協定」だ。日米両政府は既に合意しているものの、同協定の発効には国会の承認を必要とする。日本では2019年10月に日米デジタル貿易協定を含む貿易協定の審議が臨時国会で始まった。米国は議会の承認を得なくても大統領の権限で発効する特例措置を活用するため、開会中の臨時国会で承認されれば2020年1月1日にも発効される見通しだ。

 デジタル貿易協定は国が企業に対してプログラムのソースコードやアルゴリズムの開示を求めることを原則禁じている。国内では自動車や農産物分野についての貿易協定に注目が集まる中、日米政府が合意したデジタル貿易協定はインターネットを利用して国境を越えるあらゆる情報やサービスの取引が対象となる。

 デジタル貿易の対象はネット上での広告や決済など電子商取引に伴う個人情報を含むデータの越境移転のほか、デジタル製品の関税やサーバー設備の在り方、ネット上の知的財産権など幅広い。プライバシー保護や人権、環境など様々な社会問題にも影響する。将来は自動車や農産物といった分野よりも、デジタル貿易協定の影響が大きいと言われる。BSAに加盟する米IT大手はこうしたデジタル貿易協定の発効をなぜ「援護射撃」するのか。そこに米IT大手が描くデータ経済圏の「野望」が反映されているからだ。

写真 日米デジタル貿易協定の主な内容と2019年10月に都内で開催された説明会
(出所:政府の公表資料を基に日経 xTECH作成)
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中国やインド、インドネシア、南アフリカへの交渉材料

 日米両政府は1年前の2018年9月、日米首脳会談で貿易協定の締結に向けた交渉開始について合意した。だが、ラグランド氏によるとこの段階では物品や農産物が交渉対象の中心だったという。両政府がデジタル貿易の交渉を始めたのは2019年4月に入ってからだ。

 米国のトランプ政権は2017年1月にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱を宣言した。その後はカナダやメキシコとの間で2018年11月に署名した新たな自由貿易協定であるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)について米議会が現在も審議中だ。

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