300席以上分のスペース(付添人の席を含む)があるのに、通常時は100席程度分しか使われていない……。これが日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のガンバ大阪が本拠地とする、「パナソニックスタジアム 吹田(パナスタ)」での車いす席の運用実態である(図1)。

図1 パナスタの車いす席
パナスタの観客席は3層構造となっており、ホームゴール裏以外の1層目の一番上が全て車いす席となっている。車いす席の数は344席(付添人の席を含む)。付添人も3名まで隣に椅子を設置して観戦できるようになっている。
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 この問題は、席以外の設備の不足や、運営に起因する。例えば、設置されているエレベーターが少なく、車いすの観客の人数が多くなると円滑な入退場が困難になるという。さらに地震などの災害が発生してエレベーターが停止した場合、現在のスタッフの人数では安全の確保が難しい。

 これはパナスタだけの問題ではない。東京オリンピック・パラリンピックが開催される新国立競技場はオリンピックで500席、パラリンピックで747席の車いす席が確保される予定である。しかし、パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 パラリンピック統括部 部長の内田賀文氏はこう指摘する。「多くの席が車いす用に確保されているが、実際の運用についてはほとんど議論されていない」。

 こうした課題をテクノロジーで解決する取り組みを開始したのがパナソニックだ。同社は2019年10月19日にパナスタで開催されたJリーグの「ガンバ大阪」対「川崎フロンターレ」の試合で、「車いすで仲間と一歩外へ」と題したプロジェクトの実証実験を行った。普段は家で過ごしがちな車いす利用者をスタジアムに招待し、車いす利用者のスタジアム観戦を助ける各種技術を検証した。

 パナソニックが今回の実証実験に取り組むのは、社会貢献のためだけではない。同社は身体的不自由による障害「バリアー」を、ソフト・ハード両面の技術で解決する「アクセシビリティ事業」に大きな期待を寄せている。

 実は、身体的不自由に伴うバリアーの撤廃による経済効果は非常に大きい。例えば、「要支援1、2」と「要介護1、2」の人のバリアーを撤廃できると、合計で1.8兆円の消費が創出できるという計算もある。「将来的にはパナスタの車いす席を満席にしたい」(パナソニック)という。

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