米グーグル(Google)は2019年10月23日(米国時間)、量子コンピューターが既存方式のコンピューターでは到達し得ない能力を持つことを示す「量子超越性」を実証したと発表した。54量子ビットを搭載する新量子プロセッサー「Sycamore(シカモア)」が、世界最高のスーパーコンピューターで1万年かかる計算を200秒で解いたとする。

 グーグルの研究者が執筆した論文が同日、英「Nature」に掲載された。グーグルのスンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEO(最高経営責任者)は発表文で「今回のブレイクスルーによって、効率的なバッテリーの開発や、少ない消費エネルギーで肥料を化学合成する手法の開発、新しい医薬品の開発など、量子コンピューターの実用化に一歩近づくことになった」と述べている。

グーグルが自社開発した量子コンピューターのハードウエア
(出所:米グーグル)
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 グーグルは2006年から機械学習に量子コンピューターを適用する研究を開始し、2014年からは米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・マティニス(John Martinis)教授の研究チームを社内に取り込んで、量子コンピューターのハードウエアの自社開発を進めていた。量子超越性に関しては当初、2018年1月に発表した72量子ビットを搭載する量子プロセッサー「Bristlecone(ブリストルコーン)」で実証するとしていたが、実験が難航したことからSycamoreに切り替えたもようだ。

 グーグルによる量子超越性の実証においては、Sycamoreを使って「乱数を生成する量子回路」を実装し、実際に乱数(ビット列)を発生させる。並行して既存方式のコンピューターでも同様の構成の量子回路をシミュレーションし、同じように乱数を生成させる。

 量子ビットの数が少ないと、量子コンピューターが生成した乱数の確率分布は、既存のコンピューターによるシミュレーションでも再現が可能だ。だが量子ビットの数が増えていくと、既存のコンピューターでは再現が難しくなる。Sycamoreが乱数を100万回発生させるのにかかった時間は200秒(3分20秒)だったが、これを世界最速のスーパーコンピューターである「Summit」でシミュレーションすると1万年もの時間がかかるとする。

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