東芝は、次世代の収益源と位置付ける産業用IoT(IIoT:Industrial Internet of Things)事業を加速させる。2019年度末(2020年3月)までに、4分野12案件で同社のIIoTサービスが採用される見込みだ。IIoTで先行する日立製作所の「Lumada(ルマーダ)」などに対抗する体制が整いつつある。

 エネルギーやスマート工場など同社が力を注ぐ分野でIIoTサービスの提供にめどが付いた。顧客は国内にとどまらず、海外の企業も含まれるという。今後、北米や欧州、アジアなども含めた全世界での提供を目指す。詳細については2019年秋に発表する予定だ。

2人の伝道者がデジタル化を推進

 東芝取締役代表執行役会長 兼 最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏は、2018年11月に開催した中期経営計画「東芝Nextプラン」の発表会において、「2030年までに世界有数のCPS(Cyber Physical System)テクノロジー企業になる」と宣言していた。CPSは、IoT、IoP(Internet of People)、IoS(Internet of Services)の3つを包含する概念で、現実空間の“コピー”を仮想空間に構築する「デジタルツイン」を実現するものだ。IIoT基盤は、その中核的なシステムの1つと位置付けられている。

 CPSに代表される東芝のデジタル戦略は、外部から招いた2人の“伝道者”が推進する。日本IBM出身の山本宏氏(現・東芝コーポレートデジタイゼーション最高技術責任者(CTO)、デジタルイノベーションテクノロジーセンター長)と、ドイツ・シーメンス(Siemens)日本法人出身の島田太郎氏(現・東芝執行役常務、最高デジタル責任者(CDO))という外資系企業で長く活躍した2人である。山本氏は2018年7月、島田氏は同年10月に東芝に入社。その後、山本氏はIIoT基盤の骨格となる“アーキテクチャー”を策定、島田氏は社内イベントを通じてIIoT事業のモデルケースを発掘するなど、役割を分担しながらIIoT事業の加速に向けた準備を進めてきた(両氏のインタビューを後日掲載予定)。

山本宏氏(写真:加藤康)
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島田太郎氏(写真:加藤康)
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 山本氏が策定したアーキテクチャー「Toshiba IoT Reference Architecture」は、IoTシステムを「エッジ(Edge)」「プラットフォーム(Platform)」「サービス(Enterprise Service)」の3層に分け、各層を行き来するデータの流れを明確化している。こうした3層構造自体は他のアーキテクチャーにも見られ、必ずしも珍しくないが、データの用途に応じてプラットフォーム層をさらに「保管(図ではData)」「分析」「運用(エッジ層の制御など)」に分類した点に特徴があると山本氏は語る。「従来これらは一緒くたに議論されていたが、きちんと分類することでIoTシステムを構築しやすくなる」(同氏)。

東芝のIIoTアーキテクチャー「Toshiba IoT Reference Architecture」(出所:東芝)
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 TIRA策定後、東芝は自社の既存技術をToshiba IoT Reference Architectureにマッピングした。こうしたマップの作成には、今後必要になる技術やサービスを見極めたり、開発の重複を防いだりする狙いがある。手薄な領域については、社外の技術やサービスも積極的に活用する。

Toshiba IoT Reference Architectureに東芝の既存技術をマッピングしたもの(出所:東芝)
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 Toshiba IoT Reference Architectureの策定に当たっては、CPSやIIoTの業界標準を“下敷き”にした。具体的には、米国立標準技術研究所(NIST)の「Cyber-Physical Systems(CPS) Framework」と、米国企業が主導するインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)の「Industrial Internet Reference Architecture(IIRA)」に準拠している。独自性を押し出さず標準化を図ることで、IoTシステムを構成する技術やコンポーネントの再利用性が高まり、短期間・低コストでのIoTシステム構築が可能になるという。島田氏は「(日立製作所の)Lumadaと比べて1/2の期間とコストで提供できる」と自信を見せる。

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