「自動運転はそう簡単には実現できない。これが業界の共通認識になってきた」。ルネサスエレクトロニクス執行役員兼CTOの吉岡真一氏は2019年10月16日に開催した「R-Car Consortium Forum 2019」の記者会見でこう述べた。現状では自動運転システムのコストと消費電力が高すぎるという。

執行役員兼CTOの吉岡真一氏
(撮影:日経Automotive)
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 「300万円の自家用車で許容されるオプション価格は30万円が限度で、例えば70万円の自動運転システムは受け入れられない」(同氏)。またチップの消費電力が大きいと、水冷システムを組み合わせる必要があり、「部材コストが高くなるほか、車室内の空間も圧迫する」(同氏)という。

 課題解決に向け、2019年10月8日に英アーム(Arm)がトヨタ自動車や米ゼネラル・モーターズ(GM)を巻き込んで自動運転領域のコンソーシアム「Autonomous Vehicle Computing Consortium(AVCC)」を立ち上げた(関連記事)。2025年のクルマを目標に、各社が車載コンピューターやSoC(System on Chip)の要件をある程度共通化することで、開発コストを下げる試みである。

 AVCCには、自動車部品大手(ティア1)のデンソー、ドイツ・ボッシュ(Bosch)、同コンチネンタル(Continental)に加え、半導体大手の米エヌビディア(NVIDIA)、オランダNXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)が加わっている。ところが、発表時点でルネサスの社名はなかった。

 この点について、吉岡CTOは「我々のR-CarはすべてArmコアを使っており、Arm社との関係も深く、AVCCには参加する方針だ」と説明した。社内の手続きがまだ終わっておらず、AVCC発足時の発表に間に合わなかったという。

 一般に次世代のクルマは複数のECU(電子制御ユニット)をドメインECUやセントラルECUに統合する方向で、セントラルECUには高性能のプロセッサーやSoCが必要になる。この市場を狙い、多くの半導体メーカーが競っているが、各社がバラバラに開発を進めると効率が悪く、低コスト化が難しくなる。そこでArm陣営では技術をある程度共通化し、開発効率を高めたい考えである。競合の米インテル(Intel)/イスラエル・モービルアイ(Mobileye)を意識した動きとも考えられる。

 ルネサスのR-CarはArmコアに加え、独自の論理回路(ハードウエアアクセラレーター)を搭載し、人工知能(AI)の推論など特定の処理を高速かつ低消費電力で実行する。例えば、すでに量産中の「R-Car V3H」は7 TOPS(7兆回/秒)のディープラーニング(DL)処理を「数W」(同氏)でこなす。発熱が少なく、カメラモジュールの中に組み込んで使える。

 V3Hや下位のV3Mは16nm世代の半導体製造技術を使うが、「次世代版はさらに微細化を進め、より高速・低消費電力になる」(同氏)。具体的には、セントラルECU向けに60TOPS(60兆回/秒)のDL処理が可能な次世代R-Carを開発中である。消費電力は約10W(約6 TOPS/W)になる見通しで「水冷システムが必要ないことから、低コスト化に向く」(同氏)という。

R-Carのロードマップ
(出所:ルネサス)
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R-Car V3Hと米ストラドビジョン(Stradvision)のAI技術を組み合わせたフロントカメラのデモ
(撮影:日経Automotive)
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このボードの裏側に、R-Car V3Hを搭載した別のボードがある
(撮影:日経Automotive)
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デモカーに搭載された各種ボード
中央の小さなボードがコネクテッドSDK。センシングしたデータを圧縮してクラウドに送信する。こうしたクラウド連携機能が自動運転には欠かせないという(撮影:日経Automotive)
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