車両性能の設計手法が変わり始めている。トヨタ自動車は、数万台にもおよぶ車両の走行データをビッグデータとして活用し、同社高級車ブランド「レクサス」の新型セダン「LS」の性能改良に役立てた(図1)。レクサス車の購入者の乗り方を分析し、改良の根拠を裏付けるデータとすることで、経験則などによる目標設定ではなく、同社が対象とする多くの顧客が満足できるような目標値を明確にして改良できるようにした。

 トヨタは今後、車両性能の設計におけるビッグデータの活用をレクサスブランドの他車種にも広げる方針だ。部分改良車だけでなく、プラットフォームを刷新するような全面改良車でも、開発の根拠となるデータとしての活用を進める。従来の経験則に頼った開発ではなく裏付けデータに基づく開発へと軸足を移すことで、顧客が満足できる車造りに変えていく。

 車両から得られるビッグデータは、今後の車両開発に欠かせない存在となりそうだ。

図1 レクサス LS500hのフロントビュー
2019年10月に部分改良した。(撮影:日経Automotive)
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 ビッグデータを生かしたのは、2019年10月に部分改良したLSである。グレードの1つのハイブリッド車「LS500h」における車両の性能改良で活用した。

 改良内容は、アクセルの踏み込み量(開度)に応じた電池の出力(モーターの出力量)とエンジンの出力量を協調制御するシステムの変更だ。従来よりも電池の出力を高めることでアクセル開度が40%程度の走行時における駆動力を170N・m向上した。加えて、60km/hの速度まで加速する際のエンジン回転速度を約500rpm下げるといった制御に変更した(図2)。この改良により、発進時のエンジン音を低減したほか、発進時の力強さ(加速力)を改善している。

図2 LS500hの部分改良で駆動力と静粛性を向上
電池の出力を増やしたことで、アクセル開度40%の時に出力トルクが170N・m向上。さらに、エンジン回転速度を約500rpm下げることで、静粛性を高めた。(出所:トヨタ自動車)
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 この改良のどこでビッグデータが生かされたのか。トヨタは、「モーターとエンジンの協調制御のバランスをどのように設定するかを決めるための根拠を示すデータとなった」(トヨタ自動車性能実験グループ長の井筒雅之氏)と説明する。

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