フィジカル(現実)空間に存在する「実物」をサイバー(仮想)空間に再現するデジタルツイン。デジタライゼーション(デジタル変革)を代表するこの技術を工作機械に持ち込んだ新型NC(数値制御)装置を日本とドイツの大手2社がそれぞれ開発した。ヤマザキマザック(愛知県・大口町)と独シーメンス(Siemens)だ。共に欧州工作機械見本市「EMO2019(通称EMOショー)」(2019年9月16~21日、会場はドイツ・ハノーバー国際見本市会場)をワールドプレミア(世界初披露)の場として選び、多くの来場者を集めている。

 来場者が注目する理由は、これまでにない生産性の向上につながる可能性を感じているためだ。デジタルツインという最先端のデジタル技術を使うことで、「従来の延長線を超える生産性向上が得られるかもしれない」という期待の視線を来場者が注いでいるのだ。具体的には、工作機械でワーク(被切削物)を加工する前の準備時間である「段取り時間」を短縮し、工作機械の実稼働時間の割合を増やす。いわゆる段取り作業からのムダの削減である。

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デジタルツインを実現する2つの新型NC装置
左がSiemensの、右がヤマザキマザックの開発品。(写真:日経 xTECH)

工作機械の現場に「デジタルファースト」の思想を持ち込む

 デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation;DX)に対応するデジタルネーティブNC装置「Sinumerik One(シヌメリック・ワン)」を生み出した──。自社の展示ブース内で音楽と映像を使った目を引くプレゼンテーションを繰り返し、新型NC装置をアピールするのがSiemensだ。

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Siemensによるプレゼンテーション
デジタライゼーション時代に即した新しいタイプのNC装置であることを前面に打ち出した。(写真:日経 xTECH)

 同社は「デジタルネーティブ」を「デジタルファースト」とも表現する。まず、工作機械の加工現場のデータを基にソフトウエアでデジタルツイン、すなわち「仮想モデル」を作成し、工作機械の動作やワーク(被切削物)の加工をシミュレーションする。こうして、デジタル上で問題がないことを確認した後で、生産現場にある工作機械で実際にワークの加工に入る。要は、デジタルツインを工作機械に導入するNC装置を開発したとうたっているのである。

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Siemensの新しいNC装置
右側がデジタルツイン技術で作成した仮想モデル。(写真:日経 xTECH)

 デジタルツインにより、同社は作業者の教育・訓練時間や工作機械の停止時間(ダウンタイム)を減らし、実際に加工を開始するまでの時間を大幅に短縮できると語る。加えて、デジタル上で2度確認(ダブルチェック)を行ってから工作機械を動かすため、より安全な加工現場になるという。

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Bretonの5軸MC
Siemensの新しいNC装置を搭載して実証試験を進めている。(写真:日経 xTECH)

 2020年初頭に計画している発売時期を確実のものとするために、Siemensは抜かりなく手も打っている。欧州の工作機械メーカーを中心に23社に新しいNC装置を提供し、既に実証試験段階にあるからだ。例えば、伊ブレトン(Breton)が5軸マシニングセンター(MC)「Ultrix 900RT」に、仏BeAMが金属AM(Additive Manufacturing;付加製造)装置「Modulo 250」に新しいNC装置を搭載。それらを今回のEMOのSiemensブースに展示し、実用化に向けて着々と歩を進めていることをアピールしている。

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BeAMの金属AM装置
Siemensの新しいNC装置を搭載して実証試験を進めている。左は造形したワーク。(写真:日経 xTECH)

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