これからの製造業にとって競争力の鍵は、工作機械への積極的な投資にある──。欧州工作機械見本市「EMO2019(通称EMOショー)」(2019年9月16~21日、会場はドイツ・ハノーバー国際見本市会場)で、日欧アジアの工作機械メーカーがこう主張している。この点において、日本の製造業は消極的という課題を抱えているようだ。

 2019年9月17日、DMG森精機社長の森雅彦氏の会見に報道陣が200人集まった。ドイツをはじめ欧州からはもちろん、日本や米国、中国、インド、韓国などまさに世界中から記者が取材に足を運んだ。工作機械の展示会でここまで多くの報道陣が集まるのは珍しい。注目を集めるのは、ドイツが経営統合前のDMGの本拠地であり、かつDMG森精機が今、世界の工作機械業界の「顔」となっているからだ。

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DMG森精機社長の森氏
会見に世界中から200人の報道陣が集まった。(写真:日経 xTECH)

 実際、EMOショーにおける同社の存在感は大きい。会場として使っている17の展示館のうち、「2号館」を全て借り切って工作機械を展示している。1館を独占して製品を並べているのは同社だけだ。

 工作機械業界の足元の市況は良くない。日本工作機械工業会によれば、8月の受注額(速報値)は前年同月比で37.1%減と失速している。米中による貿易摩擦や自動車分野などでの受注減が影響しているようだ。だが、こうした現状を認めつつ、森氏は強気の姿勢を崩さない。その理由は、「20年ぐらい使い続けている工作機械が多く、潜在的な更新需要があるから」(同氏)だ。

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DMG森精機のブース
2号館を丸ごと借り切っている。(写真:日経 xTECH)

2010年以降、生産性が横ばい

 日本の製造業は生産現場で日々の保守が行き届いており、古い工作機械を長く使うという特徴が見られる。当然、長く使えば投資を回収しやすく、利益貢献が大きくなる利点がある。併せて、ものを大切に長く使うことは日本人の“美徳”でもある。ところが今、日本の製造業は「生産性の伸びの鈍化」という課題に直面している。

 欧州8社の研削盤メーカーから成り、スイスに拠点を置くユナイテッド・グラインディング(United Grinding)グループのある社員は、「日本は2010年から生産性が上がってない」と指摘する。日本工作機械工業会などの統計データを振り返ると、日本の製造業は2002~2008年の期間に生産効率を高めている。人を増やし、設備投資も行ったためだ。ところが、2008年9月に発生したリーマン・ショックを境に一変。人の採用を抑え、設備投資も控えた結果、2010年以降は生産性が横ばい傾向にあるという。

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United Grindingのブース
工程集約(自動化)と高精度、多品種少量対応に強い研削盤を開発している。(写真:日経 xTECH)

 現在、日本の製造業は人手不足の問題を抱えている。その解決策の1つに自動化設備の導入があるが、「日本企業は石橋をたたいて渡ろうとするほど、新しい工作機械の購入に保守的だ」と、スイス・GFマシニングソリューションズ(GF Machining Solutions)の社員は語る。「自動化設備を提案しても、周辺設備に既存メーカーの製品を使うように求められて対応できず、受注に結び付かないケースが目立つ。従来と造り方が少しでも異なるのを嫌うようだ」と言うのは、自動化設備や工作機械を造る独リープヘル(Liebherr)の社員である。こうした理由で、「今なお、手動の工作機械を使い続けている日本企業は多い」と前出のUnited Grindingの社員は現場の実態を明かす。

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