大手企業やスタートアップが開発にしのぎを削る人工知能(AI)専用チップに異形の新顔が登場した。1枚のウエハーから1つのダイだけを切り出す「ウエハースケール」の巨大AIチップだ。2019年8月に開催されたプロセッサーの祭典「Hot Chips 31」での発表からAIチップの最新動向を探る。

 毎年8月に開催されるプロセッサーのカンファレス「Hot Chips」。米スタンフォード大学で開催された今回も盛況で、昨年(2018年)に過去最高を記録した900人ほどをさらに上回る1100人以上が参加した。発表されたプロセッサーの応用先もIoT(Internet of Things)端末から携帯機器、パソコン、サーバー、車載機器まで多岐にわたる。昨年、一昨年に続いて今回も深層学習(ディープラーニング)のトレーニング(学習)や推論に向けたアクセラレーターの発表が相次いだ。

Hot Chips 31講演会場の様子
(撮影:日経 xTECH)
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215mm角の巨大AIチップに注目集まる

 中でも最も注目を集めたのが米国のスタートアップ、セレブラスシステムズ(Cerebras Systems)が試作した215mm角(4万6225mm2)の超大型半導体チップ「Wafer-Scale Engine(WSE)」である。口径300mmのSiウエハーから1つのダイだけを切り出し、いわゆる「ウエハースケール」のサイズを誇る。主に深層ニューラルネットワーク(DNN)で利用する積和(MAC)演算などに向ける。同社は講演でGPUのダイサイズで最大を誇る815mm2の「Volta GV100」を引き合いに出し、その大きさをアピールした。登壇したセレブラスの共同設立者でChief Hardware ArchitectのSean Lie氏がこの巨大なチップを掲げると、発表会場は大いに沸いた。

巨大チップを持つLie氏
(撮影:日経 xTECH)
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エヌビディアの「Volta GV100」と比較
出典:Cerebras Systems
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 「Cluster scale performance on a single chip(1枚のチップにクラスタースケールの性能を)」をうたっており、大きさもさることながらトランジスタの数やSRAMの容量も桁違いだ。トランジスタ数は1兆2000億個で、オンチップSRAMの容量は18Gバイトである。MAC演算の処理単位となる「AIコア」は40万個に上る。上下左右に隣接するコア同士は独自のインターコネクトで結合させている。このインターコネクトの総バンド幅は、100ペタ(P)ビット/秒に達するという。オンチップSRAMとのバンド幅は9ペタバイト/秒と高い。

歩留まりや熱膨張など、ウエハースケールに5つの課題

 ウエハースケールには大きく5つの課題があった。第1にチップ内における「スクライブライン(ダイシングするためにあらかじめ設ける溝)」をまたいだダイパターン間の接続である。製造には台湾TSMCの16nm世代のプロセスを用いる。通常の製造プロセスを基にしているため、ウエハーにはスクライブラインが生成される。そこでスクライブラインを越えてダイパターン間を配線するプロセスを新たに台湾TSMCと開発したという。

スクライブラインを越えてダイパターン間を配線するプロセスを新たに台湾TSMCと開発
出典:Cerebras Systems
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 第2に歩留まりの向上である。チップが巨大な分、その中に欠陥が入って歩留まりが低下する恐れが高まる。そこで欠陥が生じて動作しないAIコアがあった場合は、それを利用しないようにあらかじめ予備で形成していたコアを接続するという。

歩留まり低下への対策。欠陥が生じて動作しないAIコアがあった場合は、それを利用しないように、あらかじめ予備で形成していたコアを接続する
出典:Cerebras Systems
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