建機の遠隔操作やエンターテインメントなど、通信事業者が様々な業界の企業とタッグを組んで第5世代移動通信システム(5G)の用途開拓を進めている。そんな中、KDDI(au)と防衛医科大学などが災害救助の現場に5Gを役立てられるか否かの実証実験を実施した。実証実験に携わった医師からは期待の声が上がった一方、課題も浮き彫りとなった。

VR映像を見ながら現場に指示

 埼玉県所沢市の防衛医大のキャンパスで2019年8月29日に実施した実証実験では、実験設備などが入る建物の一室に5Gの端末と基地局を設置し、端末側に4K対応の360度カメラを接続して映像をクラウドへ伝送した。仮想現実(VR)を使ったWeb会議サービスを展開するベンチャー企業SynamonのWeb会議サーバーを介し、実験の参加者たちがVRゴーグルで映像を見ながら会話する。

実証実験のシステム構成
(出所:Synamon)
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 実証実験の設定は、複数の作業員が化学薬品などの置かれた倉庫内で作業中に地震が発生し、棚や荷物の下敷きになるなどして複数の負傷者が出たというものだ。遠隔地にいる医師や消防の後方支援者がVR映像を見ながら現場の救急隊員たちと音声で会話し、救援の重要度の判定(トリアージ)を実施したり搬送先の病院を決めたりする。

災害現場を模した実証実験環境。5Gの基地局と端末、360度カメラをあらかじめ設置した状態だった
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病院・消防署の後方支援者たち。VRゴーグルを装着し、災害現場の映像を見ながら声でコミュニケーションを取る
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 報道関係者向けのデモでは、後方支援で参加した医師がVRゴーグルを装着しながら首を左右に振って現場の状況を把握し、現場の救急隊員に向けて「(被災者の)足を触ってみて」「かなり痛がっているね。(トリアージは)赤で」などと指示を出していた。救急隊員も機敏に対応している様子を確認できた。

 VRゴーグル越しに見える災害現場の空間には仮想的なディスプレーが映し出され、被災者のトリアージ状況や薬剤の検索結果などが表示されるため、VRでの参加者同士が簡単に情報を共有できる。救急隊員たちはVRゴーグルを装着しておらずそのままでは仮想ディスプレーの表示内容を確認できないが、スマホで確認しているという。

後方支援者たちがVRゴーグルで見ている映像。災害現場の様子と共にバーチャルなディスプレーが空間上に浮かび、トリアージ状況や化学薬品の検索結果などが表示される
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 このほか、実証実験では5G回線とVRを組み合わせたWeb会議サービスを使い、防衛医大の実験施設の内部を「バーチャル見学」するデモも実施した。5Gを活用した遠隔教育の可能性も検証していた。

遠隔教育を想定した実証実験のVR映像。参加者のアバターがバーチャル空間に映し出され、個々の参加者がどの向きの映像を見ているかが他の参加者にも分かる
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